“別班”以外にも自衛隊に「秘密部隊」があった! 衝撃レポ…「妻帯者、家族持ちはゼロ」「ロシアの無線を傍受する“謎の部隊”が」

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「アンタッチャブルなエリア」

 私は前回の取材で世話になった基地のトップ、司令に3佐から話が聞けるように頼み込んだ。数日後、3佐は私が宿泊している民宿を訪ねてくれた。連日の捜索活動で、身に着けた作業服はあちこちに土砂がこびりつき、汗染みが広がっている。私は初対面のあいさつを交わしながら、なにげなく彼の作業服の右の胸元に縫い付けてある、所属と名前が書かれた、ネームタグのワッペンに眼をやった。瞬間、思わず声を上げそうになった。

 前年の冬、司令以下何十人もの基地の隊員たちにインタビューした時は、隊員の胸元のネームタグには、〈第29警戒群〉(現在は警戒隊)と記されていた。レーダーサイトの正式名称、航空自衛隊北部航空警戒管制団第29警戒群からとった所属先である。

 だが、私の眼の前にいる3佐の胸元にはこんな文字がならんでいた。

〈東千歳通信所〉

 奥尻とは違う地名である。実は奥尻を訪れるにあたり、私は六本木の防衛庁(当時)で空幕の広報官からあることを念押しされていた。レーダーサイトの敷地にはアンタッチャブルなエリアがある。立ち入ることなど論外だし、近づくことも許されない。そういう類いのものがそこにあること自体、記事で触れられては困る。見るのも聞くのも言うのも駄目。広報が何重ものバリアを巡らせ、そこまでして隠し通したいものとはいったい何だろう。厳重な目隠しをされればされるほど、その向こう側に身を潜めている「秘密」をのぞきたくなるのが人情である。

情報戦争の最前線

今なら、インターネットで検索すればたちまち虚実とりまぜた膨大な情報に出会えるが、グーグル検索やウィキペディアがまだ登場していない、ネット草創期の90年代初めである。奥尻に旅立つ前、私は図書館などで自衛隊の内幕ものとされる書籍や関連する雑誌記事をあさって、奥尻島の山頂にレーダーサイトとは別に存在している、〈アンタッチャブルなエリア〉について調べを進めた。

 やがて、陸自の情報部隊にロシアの無線電波を主に傍受している「東千歳通信所」という組織があり、その分遣班が奥尻に駐屯しているらしいことがおぼろげながらわかってきた。東千歳の分遣班は奥尻の他、稚内、根室にもある。このうち稚内の部隊は83年のソ連軍による大韓航空機撃墜の際、攻撃した戦闘機パイロットの交信を傍受したとされ、ソ連側に撃墜の事実を認めさせる決め手になったとして世界の注目を浴びた。姿形はわれわれには見えないけれど、彼らは情報戦争の最前線で超大国を相手に、銃弾ではなく傍受という武器で日夜戦っているのだ。広報官が神経を尖らせるのも無理はなかった。

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