21歳にして「目標は名脇役」と語った元関脇・寺尾 「和やかな相撲部屋」を作り上げた功績も(小林信也)

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 寺尾が十両に上がり、“未来の花形力士”と騒がれ始めた1984年、稽古場でインタビューする機会をもらった。寺尾が21歳、私も28歳と若かった。

「将来の目標は?」と尋ねると、寺尾は少し考えた後、「名脇役」と答えて、にやりとした。私は意表を突かれた。当然、「大関」とか「横綱」という答えが返ってくると思っていた。

 父親は“もろ差しの名人”と呼ばれた元関脇・鶴ヶ嶺。いまも歴代1位の技能賞10回を誇る相撲巧者だった。その三男に生まれ、常に相撲が身近にあったせいだろうか、他の若い力士と違って、冷静に自分を客観視していた。...

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