富岡製糸場がピンチで「入場無料」? 「入場者が激減し、採算ラインを下回っている」

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 1月初旬のある休日、群馬県富岡市にある世界文化遺産・富岡製糸場の周辺には上州名物の空っ風が吹いていた。連休とあってか、ひっきりなしに訪れる見学者。もっとも、その何割かは無料の入場者だ。

「製糸場の見学料は大人が千円となっていますが、もともと富岡市民は無料です。これに加えて1月1日から1カ月間、市民が同伴すれば市外在住者も1名が無料になるキャンペーンを始めました。狙いとしては、都会などから帰省している人たちが家族と一緒に来てくれるという想定でしょうか。実際、正月三が日の出足を見ている限りでは去年よりも良いと思います」(富岡市の世界遺産観光部富岡製糸場課)

 ちなみに、富岡製糸場には国宝となっている建物が3カ所もある。東置繭所(ひがしおきまゆじょ)もその一つで、壁のレンガは、当時の職人がフランス人技術者から製法を教わって懸命に作ったものだという。近代日本の黎明期、輸出するものがなかった明治政府が、必死に坂の上の雲に向かって走っていた様子がありありと伝わる。

採算ラインに届かず

 だが、富岡製糸場が明らかにしている入場者数の推移を見ると、世界遺産登録となった2014年度がピークで約133万7千人。この年は敷地が人で溢れるほどだったが、以降、右肩下がりで、コロナ禍で20年度には17万人台にまで落ち込んでしまう。その後は盛り返しており、23年度は37万人程度になりそうだ。それでも、施設の維持保全のためには足りないのだという。

「製糸場の運営は国や県の補助金と、見学料収入、お土産品の売り上げなどで賄われています。採算ラインといえるのは45万~50万人でしょうか」(同)

 何とかあと10万人ほど増やそうと、今回、無料キャンペーンに踏み切ったわけだが、もちろん、それで収入が劇的に増えるわけではない。

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