「着ぐるみの中に人がいることを想像させてはいけないので…」 ブラック労働裁判で分かったディズニーランドの「鉄の掟」

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 アーチ形のゲートをくぐるとそこは夢の国。出迎えてくれるのはミッキーマウスやドナルドダックといった着ぐるみのキャラクターだ。ディズニー内部では「キャラクター出演者」と呼ばれているが、例えば東京ディズニーランドでは1日平均で約300人が働いているという。その着ぐるみの“中の人”が運営会社のオリエンタルランドを過重労働で訴えていた裁判の判決公判(千葉地裁)が昨年12月26日に開かれた。

 社会部の記者が言う。

「訴えたのは30代の元契約社員の女性で、入社したのは9年前のことです。彼女はショーやパレードに出ていたのですが、この職種は採用枠に対して数十倍から100倍近い応募者がいるといわれています」

 時給は1320円。しかし、重さ10~30キロの着ぐるみを着て踊ったり走ったりするのは楽ではない。勤務は1日3~6時間だが、肩や腕に激しい痛みを感じるようになる。一方、ディズニー側も出演者にコンディションを自己申告させ、担当トレーナーが報告を受けるようにはなっている。だが、訴状によると具体的な対策が取られることはなかったという。

「あなた以外の人は発症していない」

 2017年1月、女性は血流障害などによる「胸郭出口症候群」と診断され、会社側に改善を求めたところ「あなた以外の人は発症していない。今まで通りに働いてください」との返事。そこでディズニーランド従業員らが加入する、なのはなユニオンに相談し、提訴となった。だが、結果は会社側の勝訴。同ユニオンの鴨桃代委員長によると、

「女性は労働基準監督署からも労災認定を受けています。だから提訴したのです。しかし、法廷はトレーナーが外部の委託業者であり、会社側が障害を認識できていたとはいえなかったと判断したのです」

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