バイデンは「白人至上主義は毒」と発言…米国「リベラル勢力」の問題点 大領領選の泥仕合が続けば内戦危機も
泥仕合でさらに進む米国政治の分断
バイデン氏は8日、南部サウスカロライナ州で演説し、「白人至上主義は毒であり、米国に存在する余地はない」と支持者に訴えかけた。トランプ氏が昨年12月の選挙集会で「(不法移民について)我が国の血統を毒している」と述べたことを意識した発言だ。バイデン陣営を中心に「トランプ氏はナチスのヒトラーの再来だ」と非難する発言が相次いでいるが、トランプ氏の人気は衰えを見せていない。
トランプ氏は自らを「負け組」とする支持者の間で“仲間意識を生み出す媒介”になっている、という指摘がある。これが正しいとすれば、トランプ氏が問題発言を繰り返せば繰り返すほど、市民社会で居場所を失った彼らの連帯感は強まることだろう。
移民問題が次期大統領選の主要な争点として浮上する中、両陣営のやりとりが過激になるのはわかるが、このような泥仕合が続けば続くほど、米国政治の分断はさらに進んでしまうのではないだろうか。
米国内でもこの懸念は共有されている。
米国の民主主義が機能不全に陥る可能性
国際政治学者であるイアン・ブレマー氏が率いる米調査企業ユーラシア・グループは8日に発表した今年の世界の「10大リスク」の第1位に「米国の分断」を選び、「大統領選挙の勝敗がどうなろうと敗北した側がその結果を認めないだろう」との悲観的な見通しを示している。
トランプ氏支持者はもちろんのこと、バイデン氏支持者もトランプ氏の当選を頑として認めず、再選挙の実施を求める大規模な抗議活動を行う可能性が高いという。
制度への忠誠よりも党派政治が優先される事態が常態化すれば、米国の民主主義が機能不全に陥ってしまうとの不安が頭をよぎる。
1月10日付米ワシントン・ポストも「政府当局者に対する暴力を伴った脅迫が増加しており、米国の民主主義が弱体化に向かっている」と警告を発している。
2020年の大統領選挙から始まったこの現象はとどまることを知らず、最近では、トランプ氏の立候補資格を認めないとしたメイン州の州務長官やコロラド州の最高裁判所判事が様々な脅迫にさらされていると指摘している。
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