政治刷新本部のメンバー38人の中で、これまでカネの問題を指摘されたのは20人 岸田首相はなぜこんな人選をしたのか
“カミソリ後藤田”と岸田首相の違い
背景にあったのは、リクルート事件が発端となった自民党へ強く吹く逆風だった。当時、首相だった竹下登氏は危機感を強め、党内に政治改革委員会を設置。会長は“カミソリ”のあだ名で知られた後藤田正晴氏が務めた。当時、伊藤氏は自民党の職員で、委員会のスタッフに任命された。
こんな立派な改革案が存在するのだ。岸田政権は大綱に書かれたことをそのまま実行すればいいだけのように思える。しかし、岸田首相は刷新本部をわざわざ設置した。どのような狙いがあるのだろうか。
「政治改革委員会について振り返ると、竹下さんは後藤田さんに全権を委任し、後藤田さんは4カ月をかけて大綱を取りまとめました。その歴史的評価は様々ですし、94年に政治改革四法として可決されるまでの間、妥協や拡大解釈による骨抜きが繰り返され、原点の精神は相当に歪められました。とはいえ、大綱が今の時代にも充分に通用する完成度を持っていることは間違いありません。一方、岸田さんは、月内までに中間取りまとめと論点の整理を行うよう刷新会議に指示しました。後藤田さんと比べると、あまりにスケジュールが早すぎます。しかし、ここに岸田さんの狙いを解く鍵があると思います」(同・伊藤氏)
刷新本部は野党へのアリバイ!?
なぜ岸田首相は議論を急ぐのか、伊藤氏は「岸田さんの視界が捉えているのは怒っている国民の姿ではなく、1月26日に招集される通常国会だからでしょう」と言う。
「イギリスの選挙制度などを参考にし、後藤田さんは練りに練って大綱をまとめました。その後の政治改革を巡る議論の叩き台としては充分すぎる内容で、だからこそ自民党は大綱を党議決定しました。一方の岸田さんは『通常国会で野党に文句を言われない』ために刷新本部に取りまとめを指示したとしか思えません。何しろ岸田さんは今に至るまで“派閥”の一語を絶対に口にせず、“政策集団”としか言わないのです。派閥政治の問題点を抜本的に改革しようと決意を固めた首相なら、そんな小手先の言い換えはしないでしょう。刷新本部の議論が野党に対するアリバイなのだとしたら、結論など出ないほうがいいということにもなります」