政治刷新本部のメンバー38人の中で、これまでカネの問題を指摘されたのは20人 岸田首相はなぜこんな人選をしたのか

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挙党一致を演出した可能性

 刷新本部には3人の派閥のトップが含まれているほか、渦中の安倍派から10人の議員が参加していることも当初から問題視されていた。多くのメディアが「この顔ぶれは国民にケンカを売っているようなものだ」「岸田首相は支持率を自分で下げにいった」といったSNSの投稿を紹介した。

 政治アナリストの伊藤惇夫氏は、刷新本部のメンバーについて「スピード違反を繰り返してきた悪質ドライバーが、よりによって交通指導員に任命されたような、そんな強い違和感を覚えます」と言う。

 国民の反発は事前に予想できたはずで、だからこそ「よりによって自民党は、なぜこんなメンバーを集めたのか」という疑問が湧く。

「岸田さんは挙党一致体制を演出したかったのでしょう。党役員をずらりと並べ、小泉進次郎さんなど一般的には人気のある議員も起用しました。ただし、今のところ刷新本部が思い切った改革案を示せるとは思えません。注目したいのは最高顧問に麻生太郎さんと菅義偉さんが任命された点です。派閥や『政治とカネ』の問題を巡って、2人の意見は正反対と言っていいでしょう。抜本的な提言に向けて、とりまとめができるとは考えられません。さらに、それこそが岸田さんが狙っていることかもしれません」(同・伊藤氏)

弥縫策に終わる可能性

 最高顧問を務める麻生太郎副総裁は麻生派のトップであり、派閥の解消については否定的だと言われている。一方、同じく最高顧問の菅義偉前首相は無所属であり、派閥の解消に向けて早くも積極的な姿勢を見せている。まさに水と油だ。

「麻生さんと菅さんの意見を両方とも国民に示すと、刷新本部で活発な議論が行われているように見せることができます。ただし、最終的には水と油ですから、議論はどこまで行っても平行線でしょう。『結論は出ない』という結論が出ても不思議ではありません。刷新本部が何らかの改革案を提示するにしても、非常に小手先の一種の弥縫策(びほうさく)に終わる可能性があると思います。もし岸田さんが抜本的な改革を望んでいないとしたら、刷新会議のメンバーは理想的な顔ぶれなのかもしれません」(同・伊藤氏)

 政治資金パーティー事件が明るみになってから、1989年に自民党がまとめた「政治改革大綱」に再び注目が集まっている。その内容は、現視点から見ても有効な提言だ。

 全文を紹介する紙幅はないが、国会議員の「資産公開法」の制定なども提案されている。政治資金は「ガラス張りの透明度」を実現すべきだと指摘。派閥のパーティーも収支の明確化のため規制が必要だと明記した。

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