政治刷新本部のメンバー38人の中で、これまでカネの問題を指摘されたのは20人 岸田首相はなぜこんな人選をしたのか
朝日新聞の衝撃的なスクープ記事だった。1月13日の朝刊1面トップに「刷新本部 安倍派9人裏金か 参加10人中 数百万~数十万円」との記事が掲載された。自民党派閥の政治資金パーティー事件を受けて設置された「政治刷新本部」は、再発防止策のとりまとめなど“自民党の信頼回復”を担うことが期待されていた──にもかかわらず、である。
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最大派閥の安倍派では、所属議員にパーティー券の販売ノルマが科されており、これを超えた売上が“裏金”に化けていたのはご存知の通り。朝日新聞は裏金を得ていた疑いのある9人の安倍派議員を実名で報道した。
《本部長代理の岡田直樹・元地方創生相、副本部長の野上浩太郎・元農林水産相、幹事を務める佐々木紀、上野通子、太田房江、松川るい、吉川有美の5氏、事務局次長の藤原崇、高橋はるみの2氏の計9人に、裏金の疑いがあるという》
これだけでも世論は沸騰したが、さらに岸田文雄首相の次の発言が火に油を注いだ。13日午後、記者団の取材に対応し、人選に問題はないとの考えを示したうえで、「特定の人間を排除するというような排除の論理は適切ではない」と9人を擁護。メンバーの交代は行わないと明言したのだ。
刷新本部の初会合が開かれたのは11日、当初から国民はメンバーの顔ぶれにア然としていた。政治資金パーティー事件での裏金問題は「政治とカネ」がその本質であるのは言うまでもない。国民は当然、「クリーンな政治」「政治資金の透明化」を求めている。
刷新会議のメンバーは全員で38人。ところが、この中には、ご自身が「政治とカネ」の問題で追及された政治家がかなりの数に達するのだ。
まず朝日新聞が報じた9人が全体の38人に占める割合を計算してみると、23・6%という結果になる。
だが、今回の政治資金パーティー事件とは別に、公職選挙法や政治資金規正法の抵触などが疑われた議員が5人もいる。内容は後で詳述するが、こちらの割合は13・1%になる。
さらに、全国紙など主要メディアに「問題のある政治献金」と報道されたことがある議員は7人。こちらの割合は18・4%だ。
これらを合計すると21人になるが、朝日新聞が実名報道した9人の中には過去に政治資金規正法に抵触する疑いが報じられた“重複議員”が1人おり、これが参議院議員の太田房江氏だ。よって合計は20人となり、全体に占める割合は52・6%に達する。
刷新本部のうち何と半数以上が「政治とカネ」の問題について“脛に傷を持つ”政治家なのだ。国民がメンバーの顔ぶれに怒るのは当然だろう。
具体的に見てみよう。本部長代行を務める幹事長の茂木敏充氏については、2018年に週刊新潮が「地元有権者に線香や衆院手帳などを配布しており、公職選挙法違反の可能性がある」と報じた。
本部長代理を務める選対委員長の小渕優子氏も14年、週刊新潮が「地元有権者が参加した東京・明治座の『観劇会』で収入より支出が上回っており、政治資金規正法違反の可能性がある」と指摘した。
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