【台湾総統選】「中国が攻撃してくる?そんなことは…」 日本の報道ではわからない現地の声

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中国に変化?

 だがこんな意見もある。工作機械工場を経営するTさん(64)は、長く国民党を支持してきたが、今回、民進党に鞍替えした。

「中国への輸出がうちを支えてきたんですが、ここ2、3年、中国からの発注が激減しているんです。最近の中国は少し変というか、もう以前のようなつきあいは望めない。中国を頼りにするのは危険。一緒に沈んでしまうかもしれない。だから民進党に……」

 前出のLさんはこんな状況も話してくれた。「中国の会社では、中国人とすごくうまくいっている。年齢的には20代から30代の中国人。中国でZ世代といわれる人たち。彼らの発想は、台湾人の私たちとすごく似ている。政治的な話には関心がなく、生活を大切にしようとする。私たちの世代では、台湾人と中国人の意識は一体化している感じ。そこに対応できないのは中国共産党。そしてそれに引きずられる台湾の国民党と民進党という気がします」

 今回の総統選の結果に対してさまざまな分析がある。民進党と国民党の差は、得票数ほど離れていないという人は多い。選対本部に集まった国民党支持者は、「選挙終盤で中国にふりまわされて票が減った」という人もいた。民進党の選対本部では、「無党派層のとり込みに成功した」という声も聞こえた。

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954(昭和29)年、長野県生れ。旅行作家。『12万円で世界を歩く』でデビュー。『ホテルバンコクにようこそ』『新・バンコク探検』『5万4千円でアジア大横断』『格安エアラインで世界一周』『愛蔵と泡盛酒場「山原船」物語』『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ』『沖縄の離島 路線バスの旅』『コロナ禍を旅する』など、アジアと旅に関する著書多数。『南の島の甲子園―八重山商工の夏』でミズノスポーツライター賞最優秀賞。近著に『僕はこんなふうに旅をしてきた』(朝日文庫)。

デイリー新潮編集部

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