和田毅「人的補償騒動」を“玉虫色”で決着させていいのか…NPBが真相解明に乗り出す必要性

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「もうその件については触れたくない」

 プロ野球のキャンプインまで約2週間となったが、連日話題となっているのは、山川穂高のフリー・エージェント(FA)移籍による人的補償を巡る問題だ。1月11日の早朝に日刊スポーツが、ソフトバンクの“顔”とも言える和田毅を西武が獲得する方針と報道した。しかし、その日の夕方には和田ではなく甲斐野央の移籍が正式発表されたことで、両チームのファンだけでなく、プロ野球界全体を巻き込む大騒動に発展した。【西尾典文/野球ライター】

 1月16日現在、ソフトバンクの三笠杉彦GMは、今回の一件についてノーコメントを貫いている。また、自主トレ中の和田も「もうその件については触れたくない」と話すにとどまっている。詳細については様々な憶測が飛び交っているが、和田が移籍の対象とはならない「プロテクトリスト」から漏れていたこと、両球団の間で何かしらのやり取りがあって甲斐野の移籍が決まったことは事実と言えそうだ。

 NPBのFAに関する規約を見ると、選手による補償については以下のように記載されている。

「旧球団(※FAによって移籍する選手が所属していた球団。今回の一件では西武)が,選手による補償を求める場合は,獲得球団が保有する支配下選手のうち,外国人選手及び獲得球団が任意に定めた28名を除いた選手名簿から旧球団が当該FA宣言選手1名につき各1名を選び,獲得することができる。前記の選手名簿の旧球団への提示はFA宣言選手との選手契約締結がコミッショナーから公示された日から2週間以内に行う」

 一方で、人的補償として指名された選手は移籍を拒否することはできず、拒否した場合には選手資格を失って引退となり、補償は金銭となることも記されている。

 今回の一件で問題となってくるのが、ここで記載されている部分だ。

人的補償のルールが“無視”された懸念も

 騒動の“張本人”である和田、三笠GM、西武の渡辺久信GMが明言を避けている以上、推測の部分が多いとは思われるが、和田が移籍を拒否したことや、甲斐野が当初はプロテクトリストからは漏れていなかったことなどに言及する報道もある。これが事実であれば、FA制度における人的補償のルールが完全に“無視”されたと言えるのだ。

 両球団の関係者は、単なる憶測によるデマということで、わざわざ触れるまでもないと考えているのかもしれない。しかしながら、ここまでの大きな騒動に発展したからには、無言を貫き通すことには無理があるのではないか。

 そもそも、28名のプロテクトリストに誰が記載されていて、誰が漏れていたかということは極めてデリケートな情報だ。さらに、結果として、移籍しなかった和田という名前が明らかになったこと自体も大問題である。

 時間の経過によって、世間から忘れられるのを待つという考え方かもしれない。だが、真実を隠そうとすればするほど、あらゆることを探られるのが世の中であり、このまま“玉虫色”の決着となれば、ソフトバンク、西武の両球団だけでなく和田にとってもマイナスのイメージからは逃れられないことになるだろう。

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