「現代人は12月と1月に最も死んでいる」「日本人の死亡原因の10%が『低温』!?」 命を守る室温対策、何度以上に設定すべき?
年8万円の医療費削減に
また花粉症は、「治った」というわけではなく、高断熱高気密の住宅ですから、屋内に入り込む花粉の量が減り、総じて花粉症による苦痛が改善されたということでしょう。同様の理由から、アレルギー性鼻炎の症状も改善し、高断熱高気密の家に引っ越してきてから鼻水が出なくなったものの、友だちの家に行くと鼻水が出るといったお子さんもいました。
「脱低温」によってもたらされるメリットは、健康状態の改善だけではありません。それに伴い医療費も浮くのです。現在、「医療大国」である日本の医療費は約45兆円となっていて、ひとりあたり毎年36万円の医療費がかかっている計算になります。私どもの試算では、先に説明したような高断熱高気密による健康改善効果で、「父55歳、母50歳、子22歳と18歳」の4人家族の場合、年8万円もの医療費削減につながるという結果が出ています。
日本に向けられた提言
こうして見ると、やはり冬の低温から身を守ることが健康長寿に大きく寄与するのは明白です。事実、欧米では室内の温度を一定以上に保つことが常識になっています。例えばアメリカのニューヨークシティでは、10月1日から5月31日までの低温期、建物の所有者は、外気温が華氏55度(摂氏約12.8度)以下の場合、室内の温度を日中は華氏68度(摂氏20度)、夜間は外気温によらず華氏62度(摂氏約16.6度)以上に保たなければならないと行政が定めています。
また、2018年にはWHO(世界保健機関)が住宅と健康に関するガイドラインを示し、居住者の健康を守るために室温を18度以上にすることを強く推奨しています。欧米では文字通りの意味での暖房、つまりルームヒーティングの重要性が浸透しているため、このWHOの「強い推奨」は、G7などの先進国においてはもっぱら日本に向けられたものとさえいえるのです。実際、先に紹介した英国の医学系学術誌発表の調査結果では、低温の影響で亡くなった人の割合は、調査対象13国のうち、中国に次いで日本が最も高かったという結果が出ています。
最終的には割安
それでは、家の中を暖かくするにはどうすればよいのでしょうか。
新しく家を建てる人は、ぜひ高断熱高気密住宅を選択していただきたいと思います。一般の住宅より工事費はかさみますが、修繕などのランニングコストを考えると、実は建設費はトータルで家にかかる費用の26%を占めるに過ぎません。その上、高断熱高気密住宅にすれば医療費はもちろん、暖房費も節約できます。生涯という長いスパンでの「ライフタイムコスト」を考えた場合、建設時に多少費用がかかっても、高断熱高気密住宅を建てた方が最終的には割安になるのです。
そう言われても、とりわけ高齢の方にとってはいまさら新しい家を建てることは現実的にかなりハードルが高いでしょう。そうした人には断熱工事がお勧めです。家の壁に断熱材を埋め込む工事をするわけですが、リフォームを兼ねて一軒家全体でと考えると、場合によっては数千万円になってしまう可能性があります。そこでよりリーズナブルで、かつ高齢の方の生活実態にも即しているのが、限定的な断熱工事です。
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