「現代人は12月と1月に最も死んでいる」「日本人の死亡原因の10%が『低温』!?」 命を守る室温対策、何度以上に設定すべき?
冬は冷え込むのが当然であり、少々の寒さは耐えることでむしろ肉体の鍛錬につながる――こうした“昭和的”な考えは改めたほうが良さそうだ。冬本番を迎えるなか、部屋の低温状態を改善しないと思わぬ災厄が……。建築の専門家が警告。家の寒さが命を縮める!【岩前 篤/近畿大学建築学部教授】
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冬本番を迎え、寒さに身を縮こまらせながら帰宅し、暖房器具のスイッチを入れて一息つく――。
年末年始は暖房の有難さが身に染みる季節です。しかし多くの日本人にとって、この表現を使うことは実は誤りといえるかもしれません。私たちは本当に“暖房”できているのでしょうか?
隙間が多く、断熱が十分ではない日本の住宅の場合、あえて言えば暖房は存在しません。私たちは「房を暖めている(ルームヒーティング)」のではなく、暖房器具を直接的に人にあてて暖めたり、あるいは人がいる周辺のみを暖めているに過ぎません。ですから、正しくは「暖房」ではなく「暖人」あるいは「採暖」と言うべきなのです。それは結局、一時的、もしくは局所的に寒さ対策をしているだけで、いってみればその場しのぎです。
つまり家にいる時、いつでもどこでも暖かい環境で過ごすことができていない。一度(ひとたび)暖房器具の近くから離れると、途端に寒さの中に身を置くことになってしまう。そして大事なポイントは、寒さは命を削る大敵だということです。
「冬を旨とすべし」
〈こう指摘するのは、近畿大学建築学部建築学科教授で副学長の岩前篤氏だ。
建築環境システムを専門とする岩前教授は、かねて日本の住宅の「寒さ」に警鐘を鳴らしてきた。寒さによって多くの人の健康が損なわれ、さらには命まで失われていると。
岩前教授が“死に至る病”である寒さについて続ける。〉
「家のつくりようは、夏を旨とすべし」
兼好法師が「徒然草」に記した有名な一文は、当時は妥当性を持っていたのでしょう。しかし、現代においてはこう言い換えるべきです。
「家のつくりようは、冬を旨とすべし」
これは、冬が最も命の危険にさらされる季節であるという「現代の事実」に基づいた提言です。
なぜ夏と冬の死亡リスクが逆転?
国内で最も古いと思われる1910年の国勢調査のデータを見ると、たしかに8月、つまり夏に最も多くの人が亡くなっています。暑さが大きな要因のひとつだったと考えられます。
ところが、1930年くらいから夏と冬の逆転が起こり始め、70年代には夏が最も少なく、冬に最も多くなる今と同じ状況に変化しているのです。日本に限らずアメリカでも、日本より20年ほど先取りして逆転現象が生じていたという報告もあります。これ以降50年以上にわたって日本では「冬>夏」で、12月と1月に亡くなる人が最も多い傾向が続いています。
では、どうして逆転現象は起きたのでしょうか。
夏に死亡者数が多かった背景には食中毒が存在します。冷蔵庫がなく、食に関する衛生環境が悪かった時代は、暑さで食べ物が腐り、食中毒で命を落とす人が多かったのだと考えられます。しかし、冷蔵庫が普及して食中毒が減ると夏の死亡リスクは減り、相対的に冬の死亡リスクが目立つようになったというわけです。
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