野菜のあく抜きは不要? 納豆は加熱すると酵素の効果が消える? 食べ方で変わる栄養効果を専門家が解説
過度なダイエットや野菜の大量生産問題
飽食の時代である現代において、実は日本人は栄養失調の傾向にあります。1950年当時の日本人の平均摂取カロリー(1日)は2098キロカロリーであったのに対し、2018年は1900キロカロリーに減少しているのです。
過度なダイエットなどの影響もあるでしょうが、同時に、昔と同じ食材を同じように食べていても、摂取できる栄養が減ってしまっている可能性が指摘されています。
野菜でいえば、大量生産の影響が考えられます。同じ畑で大量に育てるため、土から一気に栄養を吸い取って土壌が痩せてしまう。化学肥料で補おうとしても補いきれず、例えばトマトを1個食べても、昔と今とでは、今のほうが栄養が不足しているということが起き得るのです。
また、温暖化の影響も指摘されています。23年の夏は歴史的な猛暑でしたが、暑さのせいでネギなどの野菜も細くなってしまい、やはり栄養が減っていると考えられます。したがって、かなり強く意識しないと、とりわけビタミンやミネラルは不足しがちになってしまうのです。
こうした環境を考えると、食材から効率よく栄養を摂取する「食べ方」が大事になってくるわけです。高齢者においては、栄養不足によってフレイル(虚弱)になる恐れがあるので、栄養ロスを防ぐために、やはり「何を」とともに「いかに」食べるかが健康寿命を延ばすポイントとなってきます。
骨付き鶏肉と酢
では、冒頭の問いから考えてみましょう。
豚肉にはビタミンB1が豊富に含まれています。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えてくれるため、不足すると疲れやすくなったり、頭の回転が鈍くなったりします。ビタミンは水溶性で、ゆでると多くのビタミンB1が溶け出てしまいます。ですから、豚肉のビタミンB1を無駄にしないためには、ゆでるよりも焼くほうがいい。というわけで、先の問いの答えはショウガ焼きを選ぶべし、となります。
なお、豚のショウガ焼きにはタマネギやニンニクを使うのが定番ですが、それらから発生するアリシンはビタミンB1の吸収を高めますので、誰が考えたのかは分かりませんが、非常に理にかなった食べ方だと思います。
もし、豚しゃぶにするのであれば、シメに残り汁を使っておじやを作るなどして、溶け出したビタミンB1を無駄にしない方法もあります。
同じ肉でも骨付き鶏肉の場合は、酢で煮ることによって骨のカルシウムが水煮に比べて約2倍溶け出てきますので、より効果的にカルシウムを摂取できます。酢のメーカーが、“お酢を使った骨付き鶏肉のさっぱり煮”を宣伝していますが、そこにはこうした理由もあるのだと思います。
[2/5ページ]