「小さな資源循環」で環境問題を解決する――前田瑶介(WOTA代表取締役CEO)【佐藤優の頂上対決】

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WOSHで水処理を見せる

佐藤 もう一つ、「WOSH」というドラム缶型の手洗い器がありますね。

前田 WOTA BOXと同じ水処理システムを使い、避難所での手洗い需要のために開発したものです。災害時の避難所では手や身体を清潔に保つための水利用ができないことが多い。そうなると、消化器系の感染症や破傷風のリスクが高まりますから、やはり手洗いは重要です。

佐藤 これを作っていたところにコロナが流行した。

前田 ある飲食チェーンの社長がいらっしゃり、「これを店頭に置きたい」とおっしゃったんですよ。確かに飲食店の前で手洗いができれば、感染制御に役立つかもしれない。あの時はコロナで何もかも止まって、災害対策も進みませんでしたから、都市部での手指衛生に貢献できるなら、と考えた。

佐藤 東京なら、GINZA SIXやMIYASHITA PARKなど、多くの人が集まるところに設置されています。

前田 WOTA BOXは、モノづくりとしては成功しましたが、裏方のような存在で、あまり認知されなかったんですね。でもこのWOSHはいわば神社の手水舎(ちょうずや)のように、表側の入り口に置いて水処理を目の当たりにできる。その意味では、私たちの考えが伝えられる、象徴的な水回り空間なんです。

佐藤 デザインも記憶に残ります。

前田 だから非常に広報的な役割も担っています。さらにWOSHによって、WOTAは世界でもっとも水再生システムを出しているプラントメーカーになったんですよ。

佐藤 どういうことですか。

前田 プラントの運用数が千を超えるということです。これは、水処理最大手企業と同等クラスの数です。規模はまったく違いますが、機能構成は同様です。しかも弊社は機械的諸元の同じプラントが大量にある。それだと、さまざまな諸元のプラントが千あるより、パラメーター(媒介変数)が減りますから、データを集めやすく、データを活用した改善も圧倒的に速くなる。

佐藤 そのデータも活用していくわけですね。

前田 ええ、更なる技術開発につなげていきます。

佐藤 水処理の技術は、まだまだ進化する余地があるのですか。

前田 守破離で言えば、守が終わり、ようやく次のステップに行こうとしているところですね。

佐藤 具体的にはどこを変えていこうとされているのですか。

前田 例えば生物処理です。生活排水に対して微生物を活用して有機物を分解する槽の中に直接膜を浸す方法があるのですが、これは日本人の発明で、リー・クアンユー水賞を取っている。私の個人的な意見ですが、20世紀末の水分野における最大の発明で、これを超えたいと考えています。それができるとパラダイムシフトが起きます。

佐藤 楽しみですね。

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