【アジア杯・ベトナム戦】日本が苦戦した原因とトルシエ采配の落とし穴

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 大会史上最多となる5度目のアジア制覇を目指す日本が、初戦という第一関門で一時は1-2と逆転されたのは想定外だったものの、終わってみれば4-2の順当勝ちを収めた。日本の失点はいずれもCK、FKというセットプレーから。格下のチームがジャイアントキリングを演じるには、カウンターと並んで有効な手段である。

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 ただ、前半16分、ベトナムの左CKからの同点ゴールは、二度と再現できないであろうビューティフルゴールで、GK鈴木彩艶にもノーチャンスの一撃だっただけに失点もやむを得ないところ。

 しかし、前半32分に逆転を許したFKからの2失点目は、掬い上げるようにしてCKに逃げるかパンチングでもっと遠くにクリアして欲しかった。さらに、ゴールを決めたFWファム・トゥアン・ハイをフリーにしてしまったのはいただけない。

 森保一監督も「相手は1チャンス、セットプレーかカウンター狙いでしたが、今日は1チャンスだけでなく2チャンスで失点したのは反省しないといけないところ。この痛い思いを修正して、勝つ確率を高めたいと思います」と反省の弁を口にした。

 試合はMF南野拓実の2ゴールで同点に追いつくと、前半アディショナルタイムにはMF中村敬斗のカットインからのシュートで逆転に成功して前半を折り返した。南野自身「前半は相手に逆転されて難しい展開。チームとして何とか前半で逆転して強さを見せられたのは良かった」と言うように、結果オーライの前半でもあった。

トルシエ采配の落とし穴

 日本が苦戦した原因は、攻撃に緩急の変化がなく、手詰まりだったからだ。MF伊東純也と1トップのFW細谷真大の持ち味は、相手DF陣の背後へ抜け出るスピードにある。しかし、そんなことはベトナム代表のフィリップ・トルシエ監督も十分に承知している。5BKは5-4-1の布陣から自陣ペナルティーエリアまで下がり、伊東と細谷のスペースを消してきた。

 細谷は屈強なCBのマンマークに遭ったこともあり、伊東とともに背後へ抜け出すプレーを披露するシーンは一度もなかった。その意味でベトナムの狙いは的中したが、同時にそこには思わぬ落とし穴があった。

 ベトナムが深く引いたDFラインだったため、南野が一度、バイタルエリアに下がるとノーマークになり、フリーでプレーできる余裕を享受できたのだ。前半11分の先制点は右SB菅原由勢のシュートのこぼれ球を楽々と押し込んだし、前半45分の同点ゴールもボランチ遠藤航の股抜きタテパスをフリーで受けて冷静に右スミに流し込んだ。

 前半で逆転できたことで、後半の森保監督は余裕を持った采配ができたのは第2戦以降にとってプラス材料である。まず、細谷に代えて「前線で起点を作るために期待した」というFW上田綺世を1トップに起用。次いで、ゴール嗅覚に優れているもののタテへの突破は得意ではない中村に代えてMF堂安律を投入し、伊東を左MFにコンバートして攻撃の幅を広げた。

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