「上司の愛人だった妻」「シングルマザーの実母」二人の秘密を知ってがく然…50歳「不倫男性」の心境「僕には女難の相があるのでしょうか」

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和喜さんの“今年の目標”

 だが結局、紘子さんは家庭を捨てることはできなかった。和喜さんのほうは、妻に携帯電話を盗み見られて、相手が紘子さんであることもバレてしまった。すぐに出て行って、顔も見たくないと言われ、彼は家を出た。それが昨年夏のことだ。

「学生時代に住んだような古いアパートを借りています。妻は当初は激昂して、会社にバラすと言っていましたが、僕が辞めたら子どもの将来に困ると思ったのか、告発はやめたようです。給料の半分近くは妻に渡していますよ、今でも。息子はまだ11歳ですから今後、学費もかかります。会社には別居を内緒にしているので、ときどき事務的な連絡だけはとりあっています」

 週末はなるべく家に行って息子と過ごすようにしている。妻は「おとうさんは単身赴任で地方にいると話したから、話を合わせて」と言った。

「息子には、話があるならいつでも携帯に連絡してくるようにと言ってあります。でも子どもってすごいですよね。単身赴任は一応、信じているようですが、『おとうさんとおかあさん、離れてよかったんじゃないの』と先日、言われました。一緒にいても楽しそうじゃなかった、おかあさんは最近、明るいよって。おとうさんも前よりいい感じ、と(笑)。妻は息子を私立中学に入れようとしていたんですが、最近はその話もしなくなったそうです。もともと地元の公立に友だちと一緒に行きたがっていた息子はホッとしている」

 息子を見ていると自分の幼かったころを思い出すと和喜さんは言う。母に気を遣い、聞きたいことも言いたいことも言葉にしなかった自分を不憫に感じるそうだ。

「だからこそ息子には遠慮なく何でもいえる環境を作ってやりたいと思っていたんです。でもやっぱり、単身赴任だと嘘をついている。これが息子の傷にならなければいいなとは思っているんですが」

 妻から離婚という言葉は出ていない。ただ、いつまでこの状態が続くのかはわからない。彼から離婚を言い出すつもりはない。

「年末年始はおとうさんは帰ってこられないということになってるから、と妻に言われて……。妻は息子を連れて実家に行っていたようです。ひとりでテレビを見ながら、ほぼずっと飲んだくれていました。僕は元日生まれなので、ひとりきりで50歳になりました。祝ってもらってももらえなくても、年は勝手にとるんですよね。年明けに会社に行くために久しぶりに鏡を見たら、あまりに老けたおっさんがいたのでびっくりしましたけどね(笑)」

 初出社の日、会社の前でいきなり紘子さんに出くわした。目を見交わして会釈をしたが気まずかった。何をやってるんだろうと自己嫌悪に陥ったと彼は言う。

「それでも生きていくしかないとちょっと開き直りました。今日のことだけ考えて起きて、必死に仕事をして、くたびれ果てて眠る。それでいいんじゃないか、と」

 うつむいていた和喜さんはふと顔を上げて言った。それでも今年の目標はあるんですよ、と。

「母の納骨をしてないんですよ。お墓がないから。僕の住んでいる古いアパートに骨壺が置いてあるままだから、今年はなんとかどこかに納めてあげたい。そう思っています」

前編【50歳「不倫男性」の告白 妻を紹介したら、実母はいきなり「あの人は私と同じ匂いがする」と漏らした…その直感は怖いくらい当たっていた】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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