「上司の愛人だった妻」「シングルマザーの実母」二人の秘密を知ってがく然…50歳「不倫男性」の心境「僕には女難の相があるのでしょうか」
心の穴を埋めてくれる女性が…
母が言った通り、妻とは似たもの同士だったのではないだろうか。だからこそお互いに避け合っていたのかもしれない。ただ、和喜さんが妻にも母にも裏切られたような気持ちになったのは当然だろう。そしてそういうとき心の穴を埋めてくれる女性が出てくるものだ。知らず知らずのうちに求めているのだから。
「妻の不倫相手だった人が亡くなったあと、妻の同僚で僕の同期でもある紘子から『ちょっと一杯やっていかない?』と声をかけられたことがあったんです。紘子は別に密告したくて僕に声をかけたわけではなかったみたいだけど、僕にすれば当然、妻と仲のいい紘子から聞き出したいこともあった。ただ、彼女は多くは語りませんでした。『周りはいろいろ噂するけど、本人が結婚後は関係がないと言っているなら信じてあげなさいよ』とも言われました。もちろん、そんな言葉は信じられなかったけど、紘子が案外、いいやつなんだなとは思いましたね」
そういうとき女性はつい同性に厳しくなるものだ。だが紘子さんは中立的な立場をとりながら、いろいろな方法で和喜さん夫婦が壊れないように気を配ってくれていた。それをありがたいと思うと同時に、紘子さんへの恋慕につながるのだから、男と女は本当にわからない。
「その後、紘子とはときどき食事をしたり軽く一杯やったりするようになりました。紘子は早くに結婚して当時、子どもがもう成人していたので夜も時間が自由になる。母が亡くなったときの実の父の顛末で、僕はすっかり疲弊してしまった。あるとき紘子に会って、すべて話したんです。紘子は、おかあさんも気持ちもわかるし、和喜の気持ちもわかる。せつないねって涙ぐんで……」
彼はそのまま紘子さんの腕をつかんで立ち上がった。会計をすませて居酒屋を出ると、物も言わずに近くのホテルに彼女を連れ込んだ。
「頼む。少しの時間でいいから、オレを抱きしめていてほしいと彼女に言いました。セックスなどしなくてよかった。ただ温かい人肌に抱かれたかったんです」
ふたりは下着だけになってベッドに潜り込んだ。そして紘子さんはじっと彼を抱きしめていてくれた。和喜さんは彼女の胸に顔を埋めて黙って泣いた。
「肌を通していろいろなものが流れ込んでくる気がして。彼女は僕を黙って抱きしめてくれたけど、最後には『大丈夫だよ、和喜なら乗り越えられる』と励ましてくれた。その日はそのまま別れました」
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