蓮舫議員の“決め台詞”が思い浮かぶ…「膨張する予算」「定額減税」「安倍派裏金問題」は全て根っこは同じ問題と言える理由

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国民の刹那の欲望に応える国家予算

 世論調査には国民の、その時々での短期的な、いってみれば刹那的な願望が表される。それに翻弄されるのは、子供にねだられるままに菓子を買いあたえ、虫歯や肥満のリスクを招くのに似ている。国民の負託を受けた政治家には、将来までの見通しや事態の全体像を示して、国民が判断できる状況をつくること、国民が判断をまちがいそうであれば、先々までの展望を示し、いまなにを選ぶのが幸福の継続につながるのか地道に説明することこそ、求められるのではないか。

 ところが、昨年末に政府が決定した2024年度予算は、コロナ禍で膨張し続けた歳出をここでしっかり抑えなければいけなかったのに、総額112兆717億円と、昨年から2兆3000億円余りしか減らなかった。むろん、100兆円を超えるような税収があるなら、それでも構わないだろうが、税収は70兆円にも満たない(その他の収入を足すと77兆円ほど)。だから、あらたな借金を35兆円近くもするというのである。

 そもそも歳出のうち国債費、つまり借金の返済が27兆円余りを占めている。これは一般家庭に置き換えれば、年収700万円余りで、過去の借金を年に二百数十万円も返済しなければならないのに、あらたに350万円もの借金をするということで、ほとんど破綻している。

 なぜ、そうなるのか。丸めていえば、「国民が望んでいること」、それも、深く考えないまま刹那的に「望んでいること」に応えようとするからだろう。

 たとえば、岸田文雄総理肝いりの少子化対策費は1.3兆円の増額となったが、給付が中心の対策で少子化に歯止めがかかるとは思えない。だが、それ以上に、こうして一般家庭ならとっくに破綻しているような、世界でもまれに見る借金体質の国家では、将来の展望が得られないので子供をつくるのを躊躇する人も増えている、という問題の本質がまったく見えていないのが情けない。

「給付」を望むかと聞かれれば、「望む」と答える人が大半だろう。しかし、「いま給付を受けて将来は苦しむ」「いまは給付を受けない代わりに将来までの安定を得る」という二つの選択肢を示されれば、大半の人は後者を選ぶのではないだろうか。ところが、政府も政治家も二つ目の選択肢を見せないまま、国民が「望んでいること」を受け入れる。そうである以上、予算は膨張するほかない。

 岸田総理が「税収増を還元する」と詭弁を弄して決定した定額減税と給付のための5兆円は、その典型である。だれだって税金など払わないで済むなら払いたくないし、減税されるならそれに越したことはない。だが、いま払わない代わりに将来苦しむのは嫌なのだ。しかし、岸田総理は、減税や給付が招く将来についての説明を避け、国民の刹那的な欲求や欲望に応えてしまう。望まれるままに麻薬をあたえ、あとは身体がどうなろうと知ったことではない、といっているようなものである。

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