ジャニーズ、宝塚、ビッグモーター… 2023年の「不祥事会見」の共通点、今後最も危ない業界とは

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「過重ノルマ型不祥事」の実例

 さて、そんな「組織人の苦悩」という世相は、実は2の「過重ノルマ型不祥事」にも当てはまる。読んで字のごとしで、会社からの営業ノルマがかなり厳しく、追いつめられた現場の人間がどうにかノルマを達成しようと、数字やデータの改ざん、不正行為に流れてしまうものだ。

「過重ノルマ型不祥事」の中で23年を象徴するものといえば、やはり中古車販売大手「ビッグモーター」の不正請求問題だ。同社では、事故車両の修理費用にノルマを課していた。本来、修理費用は車両の損傷状況によって決まるが、板金や塗装部門が修理工賃や部品から得る粗利の合計額を1台あたり14万円に設定していた。

 このようなノルマが達成できない店の店長は会議で、みんなを前に叱責され、異動や降格をさせられることもあった。それが嫌なので店長や工場長は現場に対してノルマ遵守を厳しく迫る。追いつめられた現場では、ゴルフボールを入れた靴下で車体をたたく、ドライバーで傷つけるなどして、修理費用を水増しして保険金を請求する「裏テクニック」が広まっていったというワケだ。

他人事感丸出し発言

 では、「過重ノルマ型不祥事」の会見はどんな日本の「世相」を表しているのか。それは、「高度経済成長期の日本人が今の人口減少時代の常識をなかなか受け入れられない」という世代間ギャップである。

 今回の不祥事を受けて催されたビッグモーターの会見が炎上したのは、創業者で前社長の兼重宏行氏(72)による「他人事感丸出し発言」のオンパレードが原因だ。

 ゴルフボールを入れた靴下で車に傷をつけたことに関して、「本当に許せません。ゴルフを愛する人に対する冒涜ですよ」などとピントのズレた発言をして国民をあきれさせた。その一方で、不正について「組織的ということはないと思います。個々の工場長が指示してやったんじゃないか」と完全に現場に罪をなすりつけた。さらに極め付きは、こんなことを言って、不正をした社員への刑事訴訟をちらつかせたことだ。

「やっていいこととやって悪いことがある。不正をやった人間は償いをしてもらいたい」

昔の日本とは「別の国」に

 なぜこのように「他人事」なのかというと、ノルマが達成できない現場の苦しみが、心の底から理解できないからだ。兼重氏が地元、山口・岩国市でビッグモーターを創業したのは1976年。そこから一代で約6千人もの社員がいる大企業にまで成長をさせたのが兼重氏の経営手腕であることは間違いないが、一方で「人口増時代の恩恵」があったことも否めない。

 日本は戦後、右肩上がりで人口が増え、中古車をこぞって買うような「若者」の数も団塊ジュニアが成人する1990年代くらいまではそれなりにあった。しかし、2008年をピークに人口は減少し、若者の数も減った。しかもかつてのようにデートやレジャーに必ず車が必要という時代ではなく、「若者の自動車離れ」も進行している。つまり、兼重氏が中古車販売で事業拡大をしていた頃の日本とは「別の国」のようになっている。

 だから、昔の感覚で目標を課しても現場は達成できない。怠けているわけではなく、「戦い方」が変わってきているのだ。このような世代間のビジネスに対する認識のズレは今、日本のいたるところで発生している。ビッグモーターの会見はそんな「世相」をこれ以上ないほどわかりやすい形で浮かび上がらせている。

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