ジャニーズ、宝塚、ビッグモーター… 2023年の「不祥事会見」の共通点、今後最も危ない業界とは

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15年前にいじめが問題に

 宝塚歌劇団の25歳の劇団員が「いじめやパワハラ」が原因で亡くなったとされる問題も、実は「不発弾」のひとつだ。

「女の軍隊」と言われる宝塚の内部では、かなり古くから「指導」のレベルを超えたいじめやパワハラがあると卒業生などから漏れ伝わっていた。そして15年前には「公の場」でも証言されているのだ。

 08年、17歳(当時)の生徒が同期生たちからいじめを受けて、最終的には盗難の罪を着せられて退学処分を受けた。その後、この生徒は宝塚音楽学校を相手に訴訟を起こして、宝塚内のいじめ体質などを世に訴えた。この騒動は週刊誌などが報じ、『ドキュメント タカラヅカいじめ裁判』(山下教介著、鹿砦社)として出版もされた。しかし、こちらもテレビや新聞はスルー。23年になって「週刊文春」が「いじめ」被害を受けたと報じていた25歳の劇団員がその後死亡したことを受けて、ようやくテレビや新聞も宝塚という組織の問題に言及するようになった。

 では、このような「不発弾型不祥事」の会見は、どのような日本の「世相」を表しているのか。それは「組織を守るために無理筋のうそをつき続けるしかない」という、苦しい立場に追いつめられている人が増えているということだ。

ストーリーを死守

 もっとも分かりやすく体現しているのが、9月7日の会見に登壇した東山紀之氏だ。記者からジャニー氏の性加害について知っていたのかと質問されて「うわさとしては聞いておりました」と回答。東山氏と同世代の「被害者の会」メンバーらから「まだうそをついている」「知らないわけがない」と批判の声が続出してしまったのだ。

 ただ、危機管理的な側面から言わせていただくと、もし仮に東山氏が、ジャニー氏の性加害について認識していたとしても、同じように答えるしかない。「知っていた」と答えたら東山氏も共犯として罪に問われる恐れがある。また、東山氏が知っているのなら他にも知っている人間がいるはずだという話になるので、ジャニー氏の性加害を事務所全体で黙認、隠蔽(いんぺい)していた「組織犯罪」となってしまう。

 つまり、旧ジャニーズ事務所という組織を立て直して、そこに所属するタレントを守っていくには、今回は「ジャニー喜多川氏がたった一人で周囲の目を盗んで未成年者を襲っていた」という「個人犯罪」のストーリーを死守しなくてはいけなかったのだ。

「アウト」なことを推奨していた時代

 宝塚歌劇団も同じだった。11月14日、会見に登壇した井塲睦之(いばのぶゆき)理事・制作部長が「いじめ」の事実を調査した外部の弁護士チームの報告書を読み上げて、「指導内容は社会通念に照らして不当とはいえない」「ハラスメントやいじめは確認できなかった」などと主張して大炎上した。

 これも素直に認めてしまったら、今まで宝塚が「伝統」として続けてきたこともすべて「いじめやハラスメント」にあたる可能性が出てきてしまう。そうなると、不適切な環境を黙認、放置していた阪急電鉄の責任問題となり、親会社の阪急阪神ホールディングス全体にも飛び火をしてしまう。だから、組織としては25歳の劇団員が死んだのは「長時間労働が負荷になった」というストーリーを死守するしかない。

 このような話を聞くと、身につまされる組織人も多いはずだ。コンプライアンスやハラスメントの意識が高まってきた現代において、「過去の悪行」が発覚したら、組織の根底が揺るがされる企業は少なくない。令和の感覚で言えば「アウト」なことを会社全体で推奨していたのが昭和・平成の時代なのだ。だから、そのような「過去の悪行」を指摘されても、知らぬ存ぜぬと「うそ」を貫き通すしかない。そういう苦しい立場に追いやられている組織人が日本に増えていることを、旧ジャニーズと宝塚の不祥事会見はくっきりと浮かび上がらせているのだ。

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