ジャニーズ、宝塚、ビッグモーター… 2023年の「不祥事会見」の共通点、今後最も危ない業界とは

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 いったい何人の頭頂部を見たことだろうか。謝罪、謝罪、謝罪の嵐……。世間の耳目を集める“超大型”の不祥事会見が相次いだ2023年。それらを振り返ってみると、現代日本の問題点が見事に浮き彫りになってくる。そして24年は、“あの業界”が危ないという。【窪田順生/報道対策アドバイザー】

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 報道対策アドバイザーとして、企業の危機管理を仕事にしているとつくづく感じるのが、不祥事会見ほど「世相」を表すものはないということだ。

 今、日本では毎月のように大きな不祥事が発生して、そのたびに記者会見が催される。それらを注意深く見てみると、そこには必ず今の社会のムードが反映されていることに気付く。人々が何を「正しい」と捉えているのか、どんな「ストーリー」に感情が刺激されるのかが読み取れるのだ。

許しを乞う「審判の場」

 欧米社会で企業などが不祥事を起こしても会見を開くことはめったにない。被害者がいる場合も面会などして説明や謝罪を直接伝えるのが一般的だ。では、なぜ日本ではわざわざ会見を催して、マスコミの前で経営者が深々と頭を下げ、厳しい質問攻めに遭うスタイルが定着したのか。

 諸説あるが、実際に会見の後方支援や事前トレーニングを長年してきた経験から言わせていただくと、「不祥事=社会全体に迷惑をかける」という日本独自の思想によるところが大きいと思う。日本人にとって不祥事会見とは「みんな」に許しを乞う「審判の場」なのだ。裏を返せば、「みんな」がボロカスにたたいて炎上した不祥事会見というのは、「みんな」が怒りや不満を強く感じること、「みんな」が深刻な問題だと捉えていることが、ぎゅっと凝縮されているともいえるのだ。

不祥事の3タイプ

 では、2023年の不祥事会見からは、どんな「世相」が見えてくるのか。23年に世間の注目を集めた不祥事は、以下の3タイプに分類できる。

1.不発弾型不祥事

2.過重ノルマ型不祥事

3.ムラ社会型不祥事

 まず、1の「不発弾型不祥事」とは、地中に埋もれていた不発弾が何十年もたってから急に爆発するように、かなり昔から指摘されていた問題が、何かのきっかけで注目を集めて「大炎上」をしてしまう不祥事だ。要するに「過去の悪事がバレる」というものだ。

 ジャニー喜多川氏の被害者数百名に及ぶ性加害ほど「不発弾」の名にふさわしい不祥事はない。1988年時点で元フォーリーブスの北公次氏が『光GENJIへ』(データハウス)という告発本で糾弾。99年には「週刊文春」が追及キャンペーンを行い、事務所から提訴され、最終的には性加害の事実も認定されていた。しかし、テレビや新聞はスルーした。

 それが23年3月、英・BBCがジャニー氏の性加害問題を扱うドキュメンタリー番組を放映して海外で大きな反響を呼び、国連人権理事会が問題視したことでようやく日本のマスコミも重い腰を上げて、30年以上眠っていた「不発弾」が爆発したという流れである。

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