「20歳のときカンヌのカジノでディーラーにウインクされ…」 加賀まりこが語るギャンブル人生

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100万円勝った後につけてくる男が…

 もちろん、方々のカジノにも行ったわよ。一番楽しかったのはイギリス・ロンドンを訪れた際に入ったカジノかしら。

 ロンドンには日本のパチンコ屋くらい、いたるところにカジノがあるんだけど、私が行ったのは人の紹介がないと入れないような比較的ちゃんとしたカジノ。そこなら変な人もいないだろうって安心もあったから。

 でも、その日は夜の8時からやっていたバカラで勝ち続けちゃって、深夜0時を回る頃には100万円くらい。だんだん怖くなって、もうやめようって1時くらいに換金したの。「勝っているんだからもっと」って人もいるだろうけど、私は逆。お金が無くなる怖さよりも、こんなところでツキを使ってしまう怖さかしらね。

 ところが、カジノを出て、300メートルほど離れたホテルまで歩くあいだ、明らかに私をつけてくる男の気配がある。

 あぁ、やっぱり――。持っているお金は全部上げるから命だけは助けてもらおう。そう思いながらようやくホテルのエントランスにたどり着いたその時。後ろから「お嬢さん、無事に着いてよかったですね!」って。カジノ側がわざわざ付けてくれた警護を私が勘違いしたのね。有難いけど、ホント、殺されるかと思ったわ。

「無難に勝つ」には興味なし

 結局、パリで暮らしたのは1年もないくらい。「お金を使い切る」っていう所期の目的は達成できたんだけど、「舞台『オンディーヌ』をやらないか」という浅利慶太さんからの電話がきっかけで、再び日本へ。

 女優人生はもう60年を超えたけれど、年を取るとだめね。そりゃ今でも競馬はやるし麻雀も打つけど、ハラハラ、ドキドキは減る一方よ。

 競馬も“勝ち馬に乗る”みたいな張り方は好きじゃなくて、オッズが高倍率の博打性のありそうなところばかり狙うの。でも、イクイノックスみたいな強い馬がいると、私のようなへそ曲がりはまあ当たらない。

 麻雀だって、無難な打ち方は大嫌い。この間も卓を囲んでいた知り合いが、大負けしているくせに点数の低い役で上がろうとするから、「そんなセコい上がり方するなら、二度とアンタとは打たないわ!」って叱り飛ばしちゃったわよ。カンヌのカジノのような刺激は、もう望むべくもないわね。

加賀まりこ(かがまりこ)
1943年生まれ。80歳。高校時代に路上でスカウトされたのをきっかけに芸能界入り。65年、劇団四季の舞台「オンディーヌ」に出演。81年、映画「泥の河」でキネマ旬報助演女優賞受賞。「麻雀放浪記」「陽炎座」「月曜日のユカ」「花より男子」シリーズなど代表作は多数にのぼる。

週刊新潮 2024年1月4・11日号掲載

特別読物「勝負師たちが語る 人生はギャンブルだ」より

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