「高校教師を辞め給料半減」「娘の強化費を家賃に」 レスリング・藤波朱理の父が明かす献身人生
「金メダルを取らせる確信があった」
もっとも、給料は高校教師と比べて半減する。しかも1年契約で不安定だ。東京で暮らすとなると、生活費など出費も増える。
一方、早期退職で退職金がいくばくか上乗せされるが、それ以上に大きな利点は、翌年、娘が日体大に進めば、指導を継続できることだ。さあ、どうする?
俊一氏が選んだのは、夢に向かって娘との二人三脚を続けることだった。なぜなら、
「パリで金メダルを取らせる確信がありましたから」
というわけで、朱理が高3になった春、俊一氏はひと足先に上京し、日体大に職を得る。この年、朱理は世界選手権で相手に1ポイントも与えず、全試合フォール勝ちの完全優勝。直後、俊一氏は日本代表コーチに抜てきされた。
「居候させてもらっている状態」
もっともこの時、勤務先が俊一氏に求めた最大の任務は、娘を日体大に入れることだったはずだ。三重県のお隣りの愛知県には、吉田沙保里が監督を務める強豪、至学館大学がある。
朱理が選んだのは父が勤める日体大だった。特待生で授業料は免除。大学から強化費も支給される。
「私が借りているアパートに娘が来て、二人で暮らしています。というか、家賃10万円は強化費から出ているので、今は私が居候させてもらっている状態。料理や掃除など家事は私がやっています」
人生を捧げんばかりの勢いの父に、朱理は、
「おかげさまでやっと五輪出場まできました。パリでは金メダルを取ります。サポートよろしくお願いします」
7カ月後、パリの空の下で父娘が見る景色は――。
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