【能登半島地震】「来ないで!」と言われる被災地で、各局のキャスターは何を語ったのか 群を抜いていた元NHKアナ
日テレ藤井貴彦アナ
「news every.」の2024年レギュラー放送の初日となった1月4日、日本テレビの藤井貴彦アナは石川県穴水町の町役場の前から生中継をしていた。町内の人たちが役場に避難している人たちのために炊き出しを準備する様子を伝えていた。また輪島市での取材結果として、国土交通省の投光機が到着して点灯した時に「わっ!」と歓声が上がったと伝えた。
「エリアは小さいんですが、今日の午後やっと携帯電話が通じるようになりました。さきほどこちらで中継した時に一人のご婦人が自分がテレビに映ったことで友人がLINEをして、生存確認をしてくれたと嬉しそうに話をしてくれました。
やっとですね、自分が生きていることを伝える最低限の状況が整いつつあります。当たり前のことがまだ当たり前にできていない状況が、石川県内、そしてこの地震で被災しているエリアには多く広がっています。水も電気も通らない4回目の夜を迎えることになります」
藤井アナは、こうした個々の人たちと出会った小さなエピソードを伝えるのがうまい。
翌5日には、輪島市門前町の古い僧院から生中継し、ある避難所の苦境を伝えた。
「支援物資は地震が発生してから一度も来ていないということです。地元のみなさんが持ち寄ったお米、水などを食べている状況だということです。また携帯電話は一社だけ、ある地域は伝わるんですが、その会社の携帯を持っている方がいらっしゃらないということで外部と連絡が取れない状況が続いているということです。車があってもガソリンがない。発電機に使う燃料もないということです。(中略)私が取材した避難所では、小さい子どもたちもいました。小学生になる前の女の子もお風呂を我慢している5日目だということです。水や食料はギリギリで水洗トイレが使えない状況が現在も続いています」
一向に進まない支援……それは誰の問題なのか。藤井アナのレポートからは一種の怒りのような感情が伝わってきた。ふだん温厚な人柄だけにそうした思いが視聴者にも届いたはずだ。
女性キャスターとして現地入りした小川彩佳アナ しかし…
1月4日の今年最初のTBS「news23」の放送で、小川彩佳キャスターは珠洲市役所の前からの中継に登場した。能都町から珠洲市に向かう、道路が地震のために完全に崩れ落ちて通行できない状態になっている場所や、珠洲市の海べりに続く、川状になっていて津波被害があった地域を回ったという。そして津波から高台に避難したものの、大きな揺れで自宅の中が壊滅的になった49歳の男性の自宅を取材していた。
中継で小川アナは、
「皮膚に染み入るような冷気を感じます。この市役所の周りでも家屋の塀が崩れてしまっています。地震が起きるとさらに崩れてしまうのではないか。そう覚えながらみなさん4日目の夜を過ごしていらっしゃいます」
避難所には物資が不足していると伝えながら、「物資の運搬を阻むのは道路でもあります。亀裂が道路に入っているのがおわかりいただけますでしょうか。こうした箇所が珠洲市に近づきますとどんどん増えていくんですね。さらに珠洲市に近づくと土砂崩れが起きていたり、(中略)道路自体が崩落して道が寸断されて、その先に進めなくなっていたりというところもありました」
小川アナの取材は、主に道路の崩落などのインフラの問題が軸だった。それゆえなのか、もうひとつ被災している人たちの「生の声」を届けることができていない印象を受けた。
スタジオから伝えたいことがあれば…と言われて小川アナが語ったのは、
「みなさん、なかなかこの現実を受けとめきれないという中で、必死につなぎとめてきた時間がここまでありました。ただこの4日目となってきますと、どうしもこれからの不安、それから恐怖というのが頭をよぎるのだそうです。といいますのも、この珠洲市の人口の半数が65歳以上ということで、お年寄りの方も大勢いらっしゃる。全壊となってしまった住宅をまた一から建て直す気力があるのか。地震が頻発しているなかで、これからも住み続けることができるのか。この地域、ふるさとがなくなってしまうのではないか。そうした思いで不安を抱えて恐怖だと表現する方もいらっしゃいました。物資も時間も前を向くにはまだまだ足りていない、そうした過酷な現状がここにはあります」
この翌日の番組には小川キャスターは登場しなかった。数少ない現地入りした女性キャスターだったにもかかわらず、それを活かし切れていない印象だった。
[2/4ページ]