急転直下、ソフトの甲斐野央が西武へ移籍 後味の悪いFA人的補償で思い出す「中日大ベテラン」のケース
人的補償を巡る水面下の動き
ファンにとって最大の関心事は、なぜホークスはチームの象徴的存在である和田を、28人のプロテクト名簿に入れなかったのかという点だろう。一般的にはプロテクト名簿を受け取った後、補償を受ける球団はどのポジションを埋めるべきかを最優先で考える。何人かの候補選手を絞り込み、さらにチームの年齢層なども加味して、人的補償の選手を決めることになる。
「実際はかなりの心理戦が展開されています。相手チームが投手を欲していると思えば、投手を中心にガードしますし、野手も同じ。ベテランか中堅か、あるいは入団間もない選手を狙ってくるかどうかも検討します。また、相手の球団が補強費は潤沢ではないとか、諸状況を見極め、指名して来ることはないと踏んで、あえて高年俸のベテラン選手を外すこともありますが、逆にそこを狙われて指名されるパターンもある。2007年1月、門倉健(50)の人的補償で、巨人から横浜に移籍した工藤公康氏(60)がこのパターンだと言われています」(ベテラン記者)
2018年オフには、西武から炭谷銀仁朗(36)、広島から丸佳浩(34)をFAで獲得した巨人から投手の内海哲也(41)が西武へ、野手の長野久義(39)が広島へ、それぞれ人的補償で移籍したが、巨人にとっても功労者である2選手がプロテクトされていなかったことが話題となった。
「人的補償で移籍指名を受けた選手は拒否できません。拒否した場合、選手は資格停止になり、金銭補償になりますが、まさに青天のへきれきで移籍を告げられることになります。和田のように、ホークスで選手人生を全うしたいという希望だけでなく、その実績が申し分ない選手でも、プロテクトから外れたら例外はないのです」(在京球団スタッフ)
だが、過去に1度だけ、人的補償を拒否したとされる事例があるという。
人的補償を拒否
2017年オフ、海外FA権を行使した日本ハムの大野奨太(37 )を、中日が獲得した。12月20日、中日から届いたプロテクト名簿を見た日本ハムの吉村浩GM(59=当時)は「検討に値する。ファイターズとしてインパクトはありますね。すぐには決まりません」と、魅力的な選手が人的補償の中にいることを匂わせた。
「白羽の矢が立ったのは、投手コーチを兼任していた岩瀬仁紀(49)でした。通算1002試合登板、日本球界最多の407セーブ。中日の守護神だけでなく、レジェンドの加入はチームに刺激を与えると思ったのでしょう。中日からすれば、岩瀬は当時43歳。しかもコーチ兼任者を指名することはないだろうと、名簿に入れなかったのですが、日本ハムは岩瀬を指名したのです」(ベテラン記者)
今回の和田と同様、長くチームを支えた大功労者をFAの人的補償で差し出したら、ファンの大反発を招きかねない。何より、球団にとっても大変な失態となる。
「球団も規則にのっとり、岩瀬に打診したのですが“人的補償で移籍なら引退します”と岩瀬が返答。困り果てた中日が日本ハムと協議し、最終的に金銭補償になりました。当時、この件が一部で報じられると、プロテクトから外す選手には事前に話して同意を得るなど、FAの人的補償制度の問題点を改めるべきではないかとの声が出ました。今回の件で改めてこの問題は議論されてもいいかもしれません」(同)
〈そもそも山川なんかとるから、こんな問題が起きるんだ!〉
SNSに投稿された、ホークスファンの怒りの声だが、今回のFAで何かと“お騒がせ”した上で間もなくキャンプを迎える山川穂高(32)は、さぞかし肩身の狭い思いをしていることだろう。