能登半島地震、石川県の「死者名」非公表の是非 専門家は「災害の教訓を語り継ぐ際に重要」

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教訓を語り継ぐため

 前出の牛山教授は「災害による死者の氏名を公表するかどうかは、意見が分かれる難しい問題です」と前置きをした上で、

「私としてはできれば公表したほうがよいのではと考えています。まず、捜索活動の場や安否を気遣う方々にとっては、安否不明者だけではなく、死者の氏名も大切な情報だからです。この情報が共有されていることで、手がかりを見つけやすくなったり自治体への無用な問い合わせが減ったりと、捜索活動全体に役立つと思います」

 さらに、現場におけるメリットだけではなく、

「死者の氏名とは、そこに実在の人間が生きていたというリアリティーを後世に伝える貴重な情報だと思います。災害の教訓を語り継ぐ際、極めて重要な意味を持っているといえるのではないでしょうか」

 元上智大学教授(情報メディア法)の田島泰彦氏も、

「そもそも、死者の氏名は公共的なものです。誰がどう亡くなったかという記録は、われわれにとってかけがえのない歴史そのものだからです。災害によって亡くなった場合であれば尚更でしょう。それが自治体の恣意的な判断で一律非公表にされるのは、あってはならないことだと思います」

 亡くなった方の中には誰一人として“名無しの権兵衛”はいない。被災の記憶を将来風化させないためにも、早急に死者名の公表が求められている。

週刊新潮 2024年1月18日号掲載

特集「孤絶『震源地』 徹底取材『能登大地震』の“生と死”」より

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