ソフトバンク球団への信頼は地に落ちた…「和田毅」流出騒動が“致命傷”になりかねない理由

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「ことの真相も気になるけどね」

 もうひとつ気になるのが、ソフトバンク球団内でのコミュニケーションだ。

 今年から就任する小久保裕紀監督は、昨年11月26日に地元の和歌山市内で行われた「第19回小久保裕紀杯学童野球大会」に出席した際、有原航平と和田については開幕ローテーション内定を伝えたとコメントしており、そのことからも和田が人的補償で抜けるなどとは微塵も考えていないことがよく分かる。

 球団の上層部としては、今年で43歳という年齢と、推定2億円プラス出来高という高額年俸を考慮すると、プロテクトリストから和田を外しても西武が指名してこないと判断したように思われる。

 だが、西武は過去にも巨人から江藤智(豊田清の人的補償)、内海哲也(炭谷銀仁朗の人的補償)と実績のあるベテランを獲得している。そのことを考えると、和田が狙われる“危険性”を感じ取るべきではなかったか。

 一方、ソフトバンクの斉藤和巳4軍監督は、今回の人的補償について、自らのインスタグラムのストーリーで、「(和田と甲斐野でファンなどの)反応の違いがあからさまやな。そういうのあまり好きじゃないね」という感想に加え、「ことの真相も気になるけどね」とつづっている。これを見ても、球団内でフロントに不満を持っている関係者が存在していることは明らかだろう。

選手のパフォーマンスへの影響も

 更に大きなマイナスと考えられるのが、名前が挙がった和田自身や、和田を慕う選手やファンへの影響だ。1月12日時点で、和田から特にコメントは出ていないものの、一部ではショックを受けているという報道が出ている。

 今回の騒動で、和田がフロントに不信感を持ち、それが和田自身や他の選手のパフォーマンスに影響してくることもあるのではないだろうか。また、ホークスファンの怒りは、依然としてフロントに向かっている。

 三笠GMが現時点でノーコメントを貫いているのは、プロテクトリストから漏れた選手については触れるべきではないと考えているからだと思われるが、ここまで報道が出た以上、選手やファンに対して、何らかのアクションが必要ではないだろうか。

 既に和田に対しては経緯を説明していたとしても、今回報道で名前が出たことについては球団と選手間でしっかり話し合いを行ったということは対外的にも発信すべきだ。

「大型補強でV逸」と「山川穂高のFA移籍」でホークスファンの反感を買ったソフトバンクのフロント陣。それに、火に油を注ぐような「和田毅流出騒動」。ソフトバンク球団に対するファンの信頼は地に落ちたと言っても過言ではないだろう。失った信頼を回復するには、圧倒的なパ・リーグ優勝、そして日本一奪還しか残された道はない。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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