視聴率よりも気になった紅白の「意外な問題点」とは 楽器も踊りもできない歌手はオワコンなのか

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 毎年のように物議を醸す紅白歌合戦だが、昨年大みそかの「第74回紅白歌合戦」は歴代ワースト視聴率だったそうだ。旧ジャニーズがゼロの紅白ということも関心を集めたが、Snow Manが行ったYouTube生配信「Snow Man Special Live~みんなと楽しむ大晦日!~」は最大同時視聴者数133万人を突破。事務所の騒動後でも、注目度の高さを見せつけた形だ。

「期待外れの紅白」を語るとき、視聴率はやり玉に挙げられがちだが、そもそもNHKは当日の視聴者に目を向けてはいなかったのではないだろうか。忙しい現代人にとって、まるまるリアルタイム視聴する習慣はなじまない。録画して後で見るとか、好きな歌手のところだけつまみ食いするスタイルが主流になってきたことは、関係者こそよくわかっているはずだ。

 タイパ思考が加速する中で、楽曲のイントロもどんどん短くなっていると聞く。だから裏テーマは「3分でわかる紅白」だったのかな、とさえ思う。要は「得票集計前のハイライトを見れば、何が起きたか分かった気になれる演出」に振ったように思うのだ。

 それは歌手の歌よりも、数秒の切り抜き動画に耐えうるビジュアルを優先するということでもある。だから中継が多く、全体がダンス大会のような様相を呈してしまったのではないだろうか。こうした方針で最も割を食ったのは、チグハグな演出ばかりが割り当てられた演歌歌手勢だろう。

生歌よりもにぎやかな画面を優先……演歌歌手の扱いに見るNHKの罪深さ

 今回出演した演歌歌手は、天童よしみさん、山内惠介さん、水森かおりさん、坂本冬美さん、三山ひろしさん、石川さゆりさんの6名。新曲「日向岬」を歌った水森さん以外は、過去のヒット曲でマイクを握った。なるべく多くの人が知っている曲を、という観点から選曲は仕方ないとして、問題は演出。裸の芸人やらドミノ倒しやらと、歌をじっくり聞かせるどころか、歌に目が向かないようにしているとしか思えない構図が目立った。けん玉企画は毎年恒例となっているものの、ギネス記録が一度認定されて取り消しに。歌手に全く責任は無いのに、後味の悪い結果になってしまった。

 ハイライト映えしない画は困る。だからダンスもしない、楽器も弾かない演歌歌手には「にぎやかし」を入れるべきなのだ――そんな制作者の意図が透けて見えると言っては言い過ぎだろうか。倍速視聴や後追い視聴をメインに最初から構成された紅白という、主客転倒した演出ありきの演歌歌手たちの扱いには、ファンでなくても少しがっかりしてしまう。

 AIや音声加工技術が発達し、口パクさえ「踊りをしながら歌うためには仕方ない」と正当化される風潮だ。楽器もダンサーも使わず生歌一本で勝負、という歌手の気概は、どうでもいいものに成り下がったのだろうか。そう考えると昨年末の紅白の一番の問題は視聴率というより、演歌歌手へのリスペクトを欠いた(ように見える)姿勢だったように思える。

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