「藤井さんに負けてから将棋へのモチベーションが…」 永瀬拓矢九段が王座戦死闘で感じた「藤井八冠が負けない理由」
藤井が相手だと「勉強量が増える」
王座戦決着後、「九段」の肩書で対局に打ち込んでいる永瀬は、あのシリーズをどう総括しているのか。
「自分に名誉王座が懸かっていたことは開幕後は忘れていました。開幕前は“インタビューで触れなきゃいけないな”とは思っていましたけど、始まると藤井さんと対局することで頭がいっぱいでしたね。臨むに当たって、他のタイトル戦と比べると勉強量は増えました。例えば普段の定跡の研究だと90手まででとどめるところを、藤井さんが相手だと120手まで用意する感じでしょうか。藤井さんが相手だとそこまで深く用意することへのやりがいがあるんです」
永瀬は対局がない日も研究会の予定を詰め込み、1日に平均10時間も将棋の勉強をしているといわれる。その永瀬が勉強量を増やしたということは、睡眠時間までも削ったということだろうか。
「いえ、普段はアニメや漫画に触れる時間もあります。もちろんその時も将棋に意識が向いていますけどね。例えば戦争の漫画を読むとしたら、その戦術を将棋に生かせないか常に意識しています。ただ今回の王座戦では、アニメや漫画よりも対藤井戦の序盤研究のほうに関心と意欲がありました。やっぱり藤井さんがそれに応えてくれる方だからでしょうね。結果的にはその準備がうまくいったと思っています」
「負けの痛みは思ったよりある」
開幕戦は激戦の末に永瀬が勝利。第2局は優位に進めていた局面もあったが敗北。そして第3、4局では逆転負けを喫した。特に第4局は藤井玉に詰みがあるのを逃した。勝った藤井も「スコアが逆でもおかしくなかった」と振り返るほど際どいシリーズだった。
「内容が良すぎたのかもしれません。特に勝勢だった第3、4局は何もかもがうまくいっていたのに、藤井さんに終盤一本で差し切られてしまって、結果だけに恵まれなかった。だから負けの痛みは思ったよりもありましたね」
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