広まる「官製婚活」 東京都が始めたマッチングアプリの売りは「結婚していない証明書」 参加費1000円の「激安お見合いパーティー」実況中継

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「民間業者からも歓迎されている」

 生活文化スポーツ局都民活躍支援担当の須山朝子課長はイベントの狙いをこう語る。

「男女の出会いの4分の1が『マッチングアプリ』という民間の調査結果もあります。一方で、マッチングアプリで知り合った人から詐欺被害などに遭う事例もあり、使い始めるのに抵抗感を持つ人は多い。こうしたイベントを通じて、婚活する上での注意点などを学んでもらい、婚活に躊躇していた方が活動を始め、民間の婚活サービスなど自分に合ったものを積極的に活用するきっかけにしてほしいという狙いでこの事業を始めました」

 参加者の婚活意欲を高めることが目的であり、アプリも含めた事業全体でもどれだけカップルが成立し、成婚に至ったかなどの数字は追っていかないと話す。

 とはいえ、これだけの充実したイベントを参加費1000円で実施すれば、民業圧迫にはならないのか。アプリも将来的には有料化する予定というが、来年度以降の本格稼働に向け、先行利用者のみに限定している今年度は無料だ。だが、都はそうした懸念を否定する。

「事業を実施するにあたり、複数の民間事業者にもヒアリングしましたが、都の事業をきっかけに婚活をする人が増えることは望ましいと歓迎されています。実際、婚活をしている未婚者の多くが複数のアプリを併用していると聞いています。都のアプリなどを手始めに、民間の婚活サービスを利用してほしいという考えです。今のところ業界から批判的な意見は頂いていません」(須山氏)

官に頼る抵抗感はないのか

 首都圏でこのような婚活サービスを手がける自治体は、東京都に限った話ではない。埼玉県では、同様のマッチングサービス「恋たま」の運用を18年から開始。こちらはホームページ上で成果を公表しているが、運用開始から5年間で、お見合いが2万9869件、交際が約1万1591件、433件の成婚(1月10日現在)となかなかの結果である。これまで官製婚活というと、地方の自治体が過疎対策も兼ねて取り組んでいるという印象が強かったが、今や都心でも当たり前になってきているのである。

 一方で、男女の出会いを官に委ねることに抵抗を持つ層もいる。民間の婚活サイトに登録している社会人2年目の女性は、「官製婚活はちょっと」と参加をためらう。

「安い行政サービスに頼る男性に対し、年収が低いからでは、とつい勘繰ってしまう。独身であるかどうかももちろん気にはなりますが、年収がマッチしないことには。どうせだったら年収証明書も付けてほしい」

 ドラマのような感動的な出会いを経て結ばれたい。これまで当たり前に世の男女が思い描いてきた結婚観は、もう過去のものなのかもしれない。

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