「初動が遅すぎ」「逐次投入」と自衛隊の災害派遣に批判殺到 自衛隊関係者が「逐次投入がベスト」と言う根拠
熊本との比較は問題
補給路が構築できないうちは、むしろ“逐次投入”のほうが合理的だという。
「そもそも逐次投入は、戦術の概念です。兵力を小出しにすると、敵軍に各個撃破されてしまいます。これを戒める用語であり、今回は災害派遣なのですから能登半島で戦闘を行うわけではありません。自衛隊は1月1日の時点で、8500人から1万人の隊員を待機させました。現地の状況を踏まえ、地元自治体のニーズを丁寧にヒアリングし、小出しに派遣人員を積み上げました。こうして被災地に悪影響を及ぼすリスクを減らしたのです」(同・関係者)
また熊本地震との比較も「フェアな観点ではない」と自衛隊関係者は指摘する。熊本市には陸上自衛隊の第8師団が駐屯しているからだ。
「言ってみれば、第8師団の“庭先”が被災地になったようなものです。師団本部は物品も資材も備蓄していますし、熊本県内は平野も多く、様々な道路が使えました。能登半島のように補給路を構築する必要はなく、本部から迅速に救援物資を届けることができたのです。また第8師団の人員は6100人で、隊員も被災者だったという点は考慮する必要がありますが、これだけの人数が最初から被災地にいたというのは大きいでしょう。金沢市には第14普通科連隊が駐屯していますが、こちらは1200人です」(同・関係者)
赤旗の批判
Xでは「水を食料をヘリで早く届けられないのか」といった疑問の声も多い。「空中から救援物資や医療品を投下できなかったのか」、「米軍ならヘリを強行着陸させたのではないか」など、様々な意見が飛び交っている。
「空中から水や薬などの救援物資を投下することは、技術的には可能です。ただ現地の担当者は、車や住宅に当たった場合の破損を懸念したかもしれません。まして人を直撃してケガを負わせたら大問題です。地元自治体も空中投下までは依頼しなかったと思います。また米軍と自衛隊のパイロットで技能が違うということもなく、重要なのは受け入れの環境でしょう。ヘリが運んできた物資を受け取るのは自衛隊員が理想的です。被災者に任せるのは危険だと言わざるを得ません。やはり陸路を確保し、ヘリ受け入れの隊員が常駐できるようになってからヘリ空輸を活発化させるのが最も安全な方法なのです」(同・関係者)
1月7日、陸上自衛隊の第1空挺団は千葉県の習志野演習場で「降下訓練始め」を行った。Xでは「今実施しなくても良いのではないか」、「支援物資積んで被災地に向かって欲しかった」と批判の投稿が相次いだ。
日本共産党の機関紙・しんぶん赤旗(電子版)は1月10日、コラム「きょうの潮流」でこの問題を取り上げ、《救援物資を積めるであろうヘリから降りてきたのは、銃を持った自衛隊員…。違和感を覚えたのは筆者だけでしょうか》と批判した。
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