「初動が遅すぎ」「逐次投入」と自衛隊の災害派遣に批判殺到 自衛隊関係者が「逐次投入がベスト」と言う根拠

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木原防衛相の反論

 毎日新聞(電子版)が7日に配信した「自衛隊派遣、増員が容易でない背景 能登半島地震と熊本地震の差」という記事は、Xで自衛隊の“逐次投入”に理解を示す層から「ちゃんとした記事」「しっかりした取材」と評価されている。この記事に木原防衛相の説明が紹介されている。引用させていただく。

《木原氏は、半島では陸路が限られるため、「道路の復旧状況や現地での受け入れ態勢の段階などを見ながら人数を増やしていった」と説明。自衛隊では活動可能なエリアの拡大に応じて人員を増強する手法をとっており、主に平野部が被災した熊本地震とは条件が異なるとの認識を示した》

 一方、冒頭で紹介した朝日新聞DIGITALの記事では、《防衛省内からは「初動を甘く見た」との声も漏れ、かつて官邸で災害対応にあたったある省の幹部は「政治主導のパワーを感じない」と話す》との声を伝えた。

 こうなると、“逐次投入”の批判も決して間違っていないことになる。Xでも「初動も遅く後手後手」「明らかに初動の自衛隊派遣が少な過ぎ」との意見は多い。

「Xの投稿内容を見ると、大きく分けて3つの論調があるようです。1つは『岸田政権も自衛隊も駄目』の完全否定、2つ目は『自衛隊は頑張っているが、岸田政権の初動は間違っていた』と官邸を批判するものです。そして3つ目は『岸田政権も自衛隊も最善を尽くしている』と国の対応に理解を示すものです。依然として激しい議論が起きており、どれが優勢というのは言えない状況です」(同・記者)

ロシア軍と同じ過ち

 では実際のところはどうなのか。自衛隊関係者に取材を依頼すると、「能登半島の地理的条件から、むしろ“逐次投入”こそ最善の対応だったと思います」と言う。

「被災地では甚大な被害が出ています。『自衛隊は何をやっているんだ』という声が上がるのも仕方ありません。とはいえ、自衛隊が災害派遣で力を発揮できるのは、何より“自己完結”が可能だからです。食事、トイレ、寝る場所などを自分たちで確保できるのが最大の強みです。そのためには補給路の整備が必要です。補給が不完全なのに、いたずらに人員だけを投入し、それこそ現地の貴重な救援物資を自衛隊員が消費するようになっては本末転倒です」

 自衛隊は救援物資を被災地に運ぶだけでなく、自分たちが必要とする物品を運ぶためにも補給路を確保しなければならない。そこに立ちはだかるのが能登半島の地理的条件だという。

「能登半島は北、東、西の3方向を海に囲まれています。陸路は南から北進するしかなく、しかも道路網に相当な被害が出ました。徒歩で救援物資を運んだ隊員も少なくなく、崖をよじ登る姿もテレビで報じられました。こんな状況で部隊を大量に投入すると、ウクライナ戦争の緒戦でロシア軍が大渋滞を引きおこしたのと同じことが生じたでしょう。消防や警察車両の通行を妨げた可能性もありました。海路も海岸線が津波の被害を受けたため、揚陸が困難だったようです。空路はヘリがフル稼働しましたが、悪天候の影響もありましたし、何よりトラックに比べると輸送量に限界があります」(同・関係者)

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