「私の声帯はふにゃふにゃと…」 八代亜紀さんが語っていたハスキー・ヴォイスの秘密とリズムへのこだわり

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10代のころのアキちゃんに会える

「歌っていると、頭のなかに10代のころのアキちゃんが浮かんだり、父の顔が浮かんだり、みなさんが浮かんだり。いろいろ見えるの。いい時代も思い出すし、苦労したことも。キャンペーンとかね」

 八代亜紀としてシンガーになって2年間はなかなか売れなかった。

「来る日も来る日も地方回りをしていたアキちゃんに会えるんだ」

 八代さんのなかによみがえるアキちゃんはどんな姿なのか。

「心のなかのアキちゃんはね、地方の小さな駅のホームに立っているの。傍らにはボストンバッグが置かれている。そして、ひたむきなの。一所懸命なの。いつもアキちゃんは一所懸命」

 いつも八代さんはアキちゃんを褒めてあげる。

「素晴らしいね。素敵だよ」

 そう語りかける。

「いつも私はアキちゃんを思って、歌っています」

 あの「舟唄」をもう一度聴きたかった。

神舘和典(コウダテ・カズノリ)
ジャーナリスト。1962(昭和37)年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。共著に『うんちの行方』、他に『墓と葬式の見積りをとってみた』『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』など著書多数(いずれも新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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