冤罪被害者は「440万円」、エイズ受刑者は「100万円」 当局のミスを訴えた「生命の値段」を巡る裁判の見方

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懲役13年の実刑が確定

 同社への賠償額は約1億6000万円と先に触れた通りだが、このうち原告ら個人に対しては約110万~440万円となった。ちなみに、起訴が取り消された後の2021年12月の段階で、大川原社長と島田元役員、相嶋元顧問の遺族らに対して「不当な身柄拘束への刑事補償金」として1日当たり1万2500円、合計で1130万円の支払いを国は命じられている。今回の金額はそれを控除した額になる。

「相場と言われればそれに尽きるわけですが、がんが見つかって何度も保釈請求をしたのに裁判所が勾留し続けた結果亡くなった相嶋元顧問の生命の値段がこの程度だと考えると、遺族はどこまで行っても浮かばれないことでしょう」(同)

 ところで、この件とは違ってほとんど世の中には知られていないが、当局の不作為によってHIVを発症したとして国に損害賠償を求めていた男性の事案があった。このことについても触れておこう。

 男性は2009年に強盗に関与したなどとして逮捕・起訴され、2011年に懲役13年の実刑が確定した。その後に横浜刑務所に収監されたところから運命が狂い始める。

検査の6日後にHIV陽性と判断も

 それまでは少なくとも半年に1度はHIV検査を受けていたというから、男性は高い感染リスクに身を置く立場だったようだ。

 そのため収監後に体調がすぐれないことから検査を願い出たのが2012年12月。検査を受けたのは2013年4月になってからだった。しかし、その結果は男性に通知されることはなかった。実際は検査の6日後に陽性と判断されていたのだが。

 当然、男性は検査結果を教えてほしいと求めたが伝えられず、新たな検査も行われず。2014年3月になって刑務所側から「冷凍保存していた血液が使えなくなった」旨を伝えられる。それで改めて4月に刑務所で採血を受け、結果は陽性だった。が、刑務所から結果は知らされず、2次検査も実施されることはなかった。

 男性は2014年6月に別の病院で検査を受けた後に投薬治療を受けるようになり、麻痺が足から全体へ広がり、MRI検査を受けた結果、悪性脳リンパ腫の可能性が指摘され、程なくエイズを発症した。

この間、何が起こっていたのか? 1次検査の結果がなぜ伝えられなかったのか?

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