能登半島地震が発生したいまこそ見直すべき このままでは過剰なインフラを維持できない

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少子社会は現在のインフラを維持できない

 道路網が整備され、われわれが便益を享受していることは疑いない。だが、一方で、日本は異例の速度で少子化が進んでいることを忘れてはいけない。年間出生数が、統計をとるようになった1899年以降、はじめて100万人の大台を下回ったのは2016年だった。このとき、97万6979人という出生数が驚きをもって受けとられたが、それからわずか6年後の2022年には77万747人と、はじめて80万人を割り、2023年は72万6000人程度になると推計されている。

 以前から、少子化に歯止めをかけなければ現役世代が減少し、社会保障制度をはじめとする社会の維持が困難になる、と指摘されてきた。しかし、現実にこれほど急速に少子化が進んでいる以上、今後、現役世代が大幅に減少するのは確実で、このままでは早晩、現行の社会保障制度は破綻するほかない。すなわち、社会を支える費用を大幅に減らさなければ、社会が成り立たない日が訪れるということである。

 現役世代が急減する人口減社会に向けては、道路や鉄道、港湾から、いわゆるハコモノにいたるまで、インフラをコンパクトにするほかないだろう。いまのインフラをそのまま維持するだけでも、おそらく補修費用すら追いつかない。

 ところが、現実には全国のすみずみまで高速道路網が張りめぐらされ、いずれもヨーロッパ等にくらべ、かなり大がかりに建設されている。それらは近い将来、必ず老朽化して補修が必要になり、大がかりである分、その費用はかさむ。こうした既存のインフラを、はたして今後の少子社会が支えられるのだろうか。ところが、今後も立派な道路は次々と開通する予定で、整備新幹線やリニア中央新幹線なども控えている。

 かつてインフラ整備とは、われわれが子々孫々まで快適に生活するための先行投資だと説明されてきた。だが、それは少子社会が想定されず、日本経済の右肩上がりが続くと信じられていた時代の考え方である。今後、現役世代が激減するなか、社会保障費の維持だけでも大変な困難が想定されるのに、道路をはじめとしたインフラを、いったいだれが支えていくのか。

 だが、支えられなければ、それらは老朽化してリスクの塊になるだけである。しかも日本は地震国である。国土のつくり方を早急に見直さないと、日本に未来はない。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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