能登半島地震が発生したいまこそ見直すべき このままでは過剰なインフラを維持できない

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補修が大変な日本の大がかりな道路

 音楽等の取材でヨーロッパに行くことが多いが、そのたびに感じることのひとつが、日本ほどコンクリートを目にしない、目にする機会が圧倒的に少ない、ということである。電車の車窓からの風景も、「大河ドラマの撮影ができる」と感じるような昔ながらの景観が非常に多く、それは自動車で移動していても同様だ。奈良県下北山村の国道同様、岩盤を無理に切り裂いた道路もあるが、日本ほど目立たない。高速道路も自然の地形に逆らわずに通したものが多く、山中の高架もあるが、日本のようにそれが延々と続く場面は滅多にない。

 日本は国土の4分の3が山地なので、そこに自動車で快適に移動できる道路を通すとなると、どうしても山肌を大きく削り、コンクリートによる大規模な高架を建設する必要がある。しかも、地震国ゆえの耐震設計が求められるため、おのずと剥き出しのコンクリートが目立つことになる。したがって、ヨーロッパの景観と異なってしまうのも、致し方ない面がある。

 ところで、国道から市町村道までふくめた日本の道路の総延長は、国土交通省によれば128万3725.6km(2021年3月末日現在)になる。そのうち、いわゆる高速道路、すなわち高速自動車国道と一般国道自動車専用道路を合わせた高規格幹線道路は、全国高速道路建設協議会によれば1万4000km(2023年12月15日 時点)だという。2023年にも53キロが新規に開通し、今年以降も開通の予定が目白押しとなっている。

 海外を眺めると、高速道路として著名なドイツのアウトバーンの全長が1万3000km余りで、日本と近い数値ではあるが、道路の状況はだいぶ異なる。ドイツは北部が平野、中部が丘陵地帯、南部が山岳地帯だとされるが、日本よりは圧倒的に平坦な土地が多く、自然にあまり負荷をかけずに道路を通すことができている。

 つまり、日本は諸外国にくらべると、自然に負荷をかけ、コンクリートによる大規模な構造体として構築された道路が多いのだが、ここからが問題である。現在、日本中で高速道路の老朽化が問題となっているのを知っているだろうか。

 たとえば、NEXCO東日本が管理する高速道路は、北海道から関東まで計3943kmだが(2022年9月現在)、そのうち開通から30年が経過した道路が約5割を占め、10年後には約8割に達するという。同社オフィシャルサイトにも「今、高速道路の老朽化が進んでいます。橋やトンネルなどの老朽化も進み、日本の経済や暮らしを支え続けてきた高速道路が密かに悲鳴をあげています。また経過年数に伴う老朽化に加えて、大型車交通量の増加、車両総重量の増加、凍結防止剤の散布などにより、道路の老朽化がますます進行しています」と書かれている。

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