紅白歌合戦 1部も2部も過去最低視聴率で浮き彫りになったNHKの苦しすぎる事情

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純烈の「NHKプラス」と若者重視は同根

 今回の「紅白」で特に物議を醸したのは、純烈による「だってめぐり逢えたんだ~NHKプラスver.~」と若者ウケを狙った人選だろう。この2つ、実は水面下でつながっている。背景にはNHKの切実な事情がある。

 まず、同時・見逃し配信サービスの「NHKプラス」について。従来、同局のネット配信は「任意業務」だった。やってもやらなくてもよかったのである。それが2023年10月、監督官庁・総務省の有識者会議で「必須業務」に格上げする意見が取りまとめられた。同局にとっては歓迎すべき内容だった。

 これにより、放送法の一部が改正されたら、スマホなどによる視聴にも受信料などを請求できる。20代の2割近くがテレビを持たない今、同局には将来への不安がある。ネットで番組を観ることが当たり前の時代になったら、放送法改正のハードルは下がり、見通しが明るくなる。

 一方、「紅白」などを若者に観てもらい、テレビとNHKの有意性を感じてもらわないと、将来の視聴者が育たない。若者が年齢を重ねてもテレビを持たず、ネットでの番組視聴も広まらずに受信料徴収が実現しなかったら、NHKは行き詰まる。

「ガッテン!」消滅が象徴する若者重視

 わざわざ「紅白」でPRしたくらいだから、NHKプラスの登録状況は十分とは言い難い。NHKプラスへの登録資格を持つ受信契約数は地上波で約4145万件だが、登録しているのは約401万件にとどまっている。利用者はさらに少ない(NHK「2023年度第1四半期業務報告」)。

 若者重視は「紅白」に限らない。2022年2月の最終回でも個人7.4%(世帯12.7%)と高い視聴率を記録した生活科学の情報番組「ガッテン!」の消滅もその1つ。

「ガッテン」の最終回の個人視聴率は男性50歳以上だと12.8%もあった。しかし、M1(男性の20~34歳の個人視聴率)は僅か0.3%。女性も同じ。50歳以上の個人視聴率は14.4%あったが、F1(女性の20~34歳同)は1.5%に過ぎなかった。現在のNHKの番組は50代以上が観るだけでは生き残れない。

 一方で同年4月から平日午後10時45分から午後11時半までが「プライム帯・若年層ターゲットゾーン」となった。ただし、一度も観たことのない人もいるはず。1年半以上が過ぎた今も視聴率がかなり低い。午後11時台は個人1%(世帯2%)台の番組が大半である。横並びで最下位が珍しくない。それでも編成を見直す気配はないから、NHKがいかに若者を追っているのかが分かる。

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