JAL機衝突炎上事故、逮捕者が出ない可能性が高い理由とは 「捜査に1年以上かかる場合も」

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奇跡の脱出

 辰年は、尋常ならざる幕開けとなってしまった。元日に能登を襲った大地震に続き、2日にはあろうことか「関連事故」が羽田空港で発生。被災地に向かう海保機がJAL機と衝突し、5人の命が失われる惨事だった。「ヒューマンエラー」が重なった悲劇の捜査はどう進むのか。

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 羽田空港にある4本の滑走路のうち、今回の現場となったC滑走路は3360mと最長である。新千歳空港から到着したJAL516便は、2日の17時45分、管制官に向け「滑走路34R(C滑走路)着陸支障なし」と発信していた。

 その数秒後、海上保安庁機から位置を知らせる連絡を受けた管制官は「ナンバーワン(離陸1番目)。C5(誘導路)上の滑走路停止位置まで地上走行してください」と応じ、これに海保機は「向かいます。1番目。ありがとう」と応じている。両機が衝突したのは、47分ごろのことだった。

 6人が搭乗していた海保機では副機長以下5人が亡くなり、宮本元気機長(39)も重傷を負った。一方のJAL機は、衝突地点の約千メートル先で停止。着陸後18分間で乗客乗員379人全員が避難し、海外では「奇跡の脱出」などと報じられたのだった。

「逮捕者は出ない可能性が高い」

 事故原因の究明を目指す運輸安全委員会の調査と並行し、警視庁は東京空港署に特別捜査本部を設置。捜査1課の特殊犯捜査係を中心に業務上過失致死傷容疑を視野に捜査を進めている。

「海保機・JAL機の双方から回収したフライトレコーダーとボイスレコーダーの解析など、運輸安全委員会の調査を待つ形になりますが、一番の原因は海保機の誤進入。そしてそれを止められず、JAL機にゴーアラウンド(着陸復行)を指示できなかった管制官にも非があると捜査本部はみている。あとに着陸を控えていた別のJAL機に気を取られて海保機を見ていなかった、との見立てで捜査は進められています」(社会部デスク)

 事故の原因を作ったともいえる機長は、負傷から回復したのちどうなるのか。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士によれば、

「捜査は、1課の中でエレベータや自動ドアの事故など『特殊過失』を扱うチームが手掛けていると思われます。特殊過失は『事実の確定』と、そこから何を過失として捉えるかという『過失の法的評価』が難しく、時間を要する。かつて私が潜水艦なだしおの事故を扱った時にも1年以上かかりましたが、今回の捜査も同程度の期間に及ぶと予想されます」

 となると、

「逮捕者は出ない可能性が高いでしょう。逮捕後は20日ほどで起訴の可否を判断しなければならず、また長期間の捜査中に逃亡していなければ、身柄を拘束する必要もない。5人が亡くなっていることから、海保の機長だけでなく管制官とJALのパイロットも書類送検されるでしょうが、最終的に誰が起訴されるかは過失割合次第です。例えば海保8・管制1・JAL1であれば海保だけが起訴され、他は不起訴または罰金で終わるのでは。また4対4対2となれば、海保と管制官が起訴される可能性もあります」

 1月10日発売の「週刊新潮」では、乗客が語った恐怖の瞬間、専門家が分析するヒューマンエラーの原因などについて詳報する。

「週刊新潮」2024年1月18日号

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週刊新潮 2024年1月18日号掲載

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