妻は「あなたの給料は低すぎる」…48歳夫が週末にコンビニで働き始めたらガン発覚、看護師と不倫して気づいたこと

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義両親との関係は円満に、だが…

 妻を支えつつ、彼は思いきって義父の会社に入社した。一方で、密かに映子さんとのデートも続けていた。映子さんは彼より10歳年下、若いころ離婚経験があると語っていたが、「今は母とふたり暮らし」だと話していた。

「僕のガンは切除して検査した結果、意外とタチがよかったようで抗がん剤等も必要なかった。それでホッとしたこともあって、映子さんを口説いてしまった。彼女は不倫はイヤだと言ったけど、命はいつまでも続かない、僕は今、あなたとつきあわなかったら一生後悔すると。本気でした。妻にバレたらなんて考えもしなかった」

 怒濤のような1年が過ぎた。彼と妻の父親との関係は円満で、思った以上に仕事を任せてもらい、自分でも仕事が楽しいと言えるようになった。妻の母も彼を大事にしてくれている。余命いくばくもないと勝手に思い込んでいた義母だが、病気は着実によくなり、今はごく普通の暮らしができるようになった。

「下の子が小学校に入り、家庭も落ち着いています。いちばん不安なのは妻のことかもしれませんが、妻はカウンセリングも拒否している。僕が子どもを連れて義両親の家を訪ねることが増えましたが、妻は来ようとしません。僕が自分の親と仲良くしているから、ちょっと気持ちがねじれているみたい。義父に妻の子どものころの様子を聞いたんですが、確かに第一子だから厳しくした、手も上げたというのは認めました。それによって美重子は傷つき、その傷は癒えないと先日話したんです。義父もさすがに考え込んでいましたね。自分は虐待などしているつもりはなかったというけど、子どもの感じ方はまた違いますからね」

命の限界を知ったからこそ、生の充実感を求める

 今や、妻の実家では一目置かれる存在となった康太朗さんだが、そんな夫を認めようとしない妻との関係は、やはりストレス源となっている。気持ちが疲れると、彼は映子さんに逃げる。映子さんは彼の吹くクラリネットの音色に惹かれ、最近はやたらとジャズを聴くようになったという。

「すごく勉強しているんですよ。彼女自身は昔、ピアノを習っていたから、これからジャズピアノを習いたいって。前向きな人と一緒にいると自分も力強く生きようという気になれる。一度病気をすると、これからの生き方に人は目が向くのかもしれません。限りある命なら、恋しい人との時間を大事にしたい」

 自分がしていることは世間には許されないことだとわかっていると彼は言った。それでも、命の限界を知ったからこそ、生の充実感を求めると決めた。夫婦としての関係を考えると、うまくいかないことのほうが多いし、妻を理解しきれない虚しさもある。不倫がバレたら、義父母や妻から誹られるだろう。仕事も子どもも失うかもしれない。そうだとしても、今は悔いなく生きていきたい、今日話したことで自分の決意と覚悟を改めて確認したと、彼は初めて晴れ晴れとした表情になった。

前編【お見合いしたその日に「私、妊娠しているから」 クラリネット事件で夫を激怒させた“令嬢妻”の本性】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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