【大川原化工機冤罪事件】裁判所が認めた違法捜査の数々…逮捕され拘留中にがんが悪化し亡くなった開発者の長男は「違法行為を行った警察官には刑事責任を」

国内 社会

  • ブックマーク

大川原社長は社員を誇る

 新聞社やテレビ局は裁判所に違法行為を認定された刑事や検事も全く名を出さずに守る。筆者は「新聞もテレビも安積警部補や塚部貴子検事の名を出さないが、報道すべきだと思いますか?」と質問した。

 大川原社長は「我々は犯罪者扱いされて実名で報道された。その後も実名でお話をさせてもらっている。(刑事や検事の名前を報道するにあたって)本人に確認が必要で、『匿名で』と言うのなら従わなくてはならないが、そうでなければ実名で報道していただいたほうがいい」と話した。

 高田弁護士は「組織の一部として取り組むので、実名(報道)はかわいそうかなという部分はある。しかし、安積警部については個人がやった取り調べが違法と言われている。島田さんが実名で出されているのだから同じように出すべきでは。塚部検事は独立した検察官として起訴をしている。自分の行動では責任を取っていただきたい」と話した。

 判決の印象を聞かれた高田弁護士は「全体に薄味ですね」と苦笑したが、安積刑事の公文書破棄を過失ではなく「故意」と認定したことを評価した。

 大川原社長は「当社の社員が実験で(噴霧乾燥機の)温度が上がらない場所で菌が生きている事実を証明した。会社の外部の先生も支えてくれて、技術面できちっと証明できた。それをしてきたという誇りと言いますか、もしもそこが証明されていなければ、ひょっとしたら有罪にされてしまったのではないかなとも思った」と社員を誇った。社長らを拘置所に奪われた社員らは裁判に勝つべく、死に物狂いで実験を重ねていた。

 控訴期限は1月10日。高田弁護士は「国と都は控訴してくるだろう」とみる。

「起訴にあたり塚部検事が最高検の決裁を取ったほどの重要案件で、検察官の起訴を違法とした地裁判決を検察庁が受け入れることはないのではないか。また都も、安積警部補 による偽計・欺罔が認定され、警視庁公安部として受け入れがたいのでは思います」(高田弁護士)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。