【大川原化工機冤罪事件】裁判所が認めた違法捜査の数々…逮捕され拘留中にがんが悪化し亡くなった開発者の長男は「違法行為を行った警察官には刑事責任を」

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認められた「違法」

 一方、判決をこう評価する。

「2つ目の温度が上がりづらい測定口のことを公安部は知りえた、知っていたという点については、違法性が求められた。公安部がガサ(家宅捜索)に入った後、大川原(化工機)の役職員約50人を対象に任意の取り調べが行われ、複数が『うちの噴霧乾燥機はここの温度が上がりづらい』と測定口を指摘した。亡くなった相嶋さんも同じ指摘をしていた。公安部はその指摘を正式な捜査資料として残さず、『捜査メモ』という内部メモにとどめて黙殺した。相嶋さんは最も噴霧乾燥機に詳しい方なのに確かめもしない。公安部はそこの部分の温度を測っていない。捜査不足が違法とされた」(高田弁護士)

 さらに、「検事の部分も違法と言ってくれた。公安部が2018年12月に取った従業員からの供述は内部資料にとどめられ、検事には共有されなかった。塚部検事は『私は知らなかった』と弁解をした。実は逮捕後の起訴前に応援検事を使って従業員の取り調べを一斉にさせた。この時も従業員はかなり細かく測定口のことを言っていた。我々は従業員が録音していた音声ファイルを証拠として裁判所に出した。この部分が効いた。塚部検事は起訴前に、温度が上がりづらい箇所の指摘があることを認識していた。それであれば確認すべきだったのに、塚部検事は確認せずに起訴したことが違法となった」と振り返る。

 3つ目の違法については「安積警部補の島田さんに対する取り調べ。裁判所は偽計とか欺罔(きもう、人をだますこと)と言っている。これが違法と認定されたことが重要。このうち弁解録取書の作成過程における違法は、島田さんから修正を求められた安積警部補が、島田さんの言うとおりに修正したふりをして島田さんを誤信させて署名させた点が違法とされたが、さらに安積警部補は、欺罔により島田さんに署名させた弁解録取書をシュレッダ-で破棄した。これは刑法の規定する公用文書毀棄罪に該当する。安積警部補は『過失だ』と言ったが、判決は過失とは信用できないとし、故意に破棄したということも認定された」と話した。

 大川原社長は「裁判官の判断としては適切と思います。不満は部分的にはあっても全体としてはよかったなと思います」と話した。島田氏は「警察の違法(認定)は当然、検察の違法を認めてくれて嬉しい」と話した。

命令があればそんなことをするのか

 島田氏はさらに「上司の命令があったでしょうが、盲従して逮捕に突っ走った。『こういうことしていていいのか、こんな人生送っていていいのか』ということを振り返らない人がいたということにびっくりした。法に触れるか触れないかではなく、社会背景や政治を元にして起訴してしまう恐ろしさを感じました」と話した。

 噴霧乾燥機の設計者で、その性能に最も詳しい相嶋氏は、逮捕・勾留中に悪性腫瘍が発見され、高田弁護士が8回も勾留停止を求めたがすべて却下された。一時的に勾留の執行停止を受け入院した時には手遅れで、21年2月に亡くなった。起訴取り消しを知ることなく「被告人」のレッテルを貼られたまま無念の思いで生涯を閉じた。会見で相嶋さんの長男(50)は「父が逮捕された時、娘は泣いたんですよ」と言葉を詰まらせた。

 相嶋氏の妻は「命が大事だから」と嘘でもいいから容疑を認めることを求めたが、相嶋氏は拒否したという。

 筆者は「命を賭けて会社だけではなく科学と正義を守ったお父様への思いは?」と尋ねた。長男は「子どもの私が言うのも変ですが、父は子どもよりスプレードライヤーを愛していた。自分が作った装置が生物兵器に使われる疑いをかけられ、命かけても認めたくなかったと思う。命かけて仕事をするのがいいのか(という点に)は意見が分かれるかもしれないし、命のほうが大事と思いますが、(父は)折れるわけにいかなかったと思います」と話した。会見場で遺影を手にした長男は「違法行為を行った警察官には刑事責任を負わせてほしい」と悔しさを滲ませた。

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