【大川原化工機冤罪事件】裁判所が認めた違法捜査の数々…逮捕され拘留中にがんが悪化し亡くなった開発者の長男は「違法行為を行った警察官には刑事責任を」

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「規制対象外と容易に把握できた」

 問題となった噴霧乾燥機(スプレードライヤー)とは、液状の素材を高温の容器内に噴射して粉末化し、医薬品や粉末コーヒーなどを製造する装置だ。外為法においては、操作者が炭疽菌など危険な細菌に接触することなく扱えれば生物兵器の製造に転用できるとされるため、逆説的だが「安全に操作できれば違法」となる。警視庁公安部は「大川原化工機の噴霧乾燥機は熱風で装置内部を殺菌・滅菌でき、生物兵器の製造用として扱えるので違法」とした。

 しかし、同社の製品には、熱風を吹き込んでも温度が上がり切らない箇所があり細菌は死滅しない。つまり、生物兵器の製造に使える代物ではない。しかし、「経済安保」が叫ばれ、噴霧乾燥機が外為法に基づく貨物等省令により輸出規制対象品目に加わると、警視庁公安部は噴霧乾燥機のトップメーカーの同社に目を付ける。省令の文言の曖昧さも利用し、「不正輸出」を捏造。20年3月に3人を逮捕・勾留した。このことが大きく報道されたため会社は信用を失い、売上は4割も落ちた。

 起訴した塚部貴子検事は7月の証人尋問で「判断は間違っていなかった。同じ状況なら起訴する」と強弁し、謝罪も拒否した。しかし、今回の判決は、「再度温度測定していれば規制対象外と容易に把握できた。(中略)必要な捜査を尽くしておらず違法」と断じた。当初、塚部検事は温度が上がりづらい箇所があるとの指摘があったことを知らないという認識を示していたが、大川原化工機の社員への聴き取りを担当した複数の検事から「温度が上がりにくい部位がある」との報告を受けており、その録音が残されていたのだ。

弁護側が主張した「3つの違法」

 判決後の記者会見で原告側代理人の高田剛弁護士は「捜査機関として警視庁公安部の捜査の違法に加えて、検事塚部の起訴の違法まで認定された点で、いい判決と受け止めている」と振り返った。

 弁護側は3つの違法を主張した。

「1つ目は法解釈。経産省の解釈がなかったので、警視庁公安部が自らの解釈を作り上げて経産省に説得する形で事件を進めた。経産省は通達で国際基準とは異なる日本独自の基準を作っているが、国際基準に従うべきだとした。2つ目は機械性能。仮に法解釈で公安部の解釈に則ったとしても、温度が上がりにくい場所があるため粉体となって特定の場所に残った菌は殺菌できない。そのことを警視庁公安部は知っていた、知りえたのに黙殺、あるいは見逃して逮捕に及んだ。塚部(貴子)検事も温度の下がりやすい場所を知りえた、ないし知っていたにもかかわらず起訴したという違法である。3つ目に安積(伸介)警部補が島田さんに様々な違法な取り調べを行ったことを主張した。島田さんは意に反した調書に署名させられて、それが独り歩きし、逮捕・起訴にになった。安積警部補の違法な取り調べがなければ、そこから先はなかった」(高田弁護士)

 そして高田弁護士は「裁判所は1つ目の経産省の通達に従って独自解釈をしてこれに基づいて捜査したことが違法という点については、我々の主張を認めなかった。ここは残念」と述べた。

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