永野芽郁 映画界の巨匠のお気に入り、愛車はハーレー、感情を爆発させる演技が…人気の秘密を探る
得意とするキャラは「天然」ばかりではない
日本テレビ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(2021年)やTBS「ユニコーンに乗って」(2022年)など永野を主演ドラマでしか観ていないと、得意とする役柄はかわいらしい天然キャラのみと思いがちだが、映画を観ると見方が変わる。演じる役柄はかなり幅広い。
代表作の1つである主演映画「マイ・ブロークン・マリコ」(2022年)もかわいらしい天然キャラとは異なる。この作品で演じた主人公・トモヨの場合、ブラック企業に勤めるワイルドな女性だった。
トモヨの古い友人・マリコ(奈緒・28)が自死するところから物語は始まる。問題家庭に育ったマリコは子供のころからトモヨに精神的に依存していた。それなのにマリコはトモヨに相談なく死を選んだ。トモヨは強いショックを受ける。
トモヨはマリコの実家を訪ねる。この時点までは淡々としていた。しかし、家内に招き入れられると、マリコの父親(尾美としのり・58)にいきなり包丁を突き付け、「高校生だった実の娘を強姦しやがって、テメー!」と面罵。遺骨を強奪した。そのままマリコの供養と自分の心を癒やす旅に出る。
ワイルドなトモヨは作品内で何度もタバコを吸う。永野自身はタバコが苦手で非喫煙者だが、擬似タバコで吸う仕草の練習を重ね、撮影に臨んだ。
役柄の幅が広いだけでは女優として一流とは言えない。だが、演技力も巨匠・山田洋次監督(92)たちから太鼓判を押されている。
山田洋二監督の新たなお気に入り女優に
完璧主義者で知られる山田監督はうまい女優しか使わない。「男はつらいよ」シリーズでの倍賞千恵子(82)や「たそがれ清兵衛」(2002年)の宮沢りえ(50)、「小さいおうち」(2013年)の松たか子(46)、黒木華(33)といった顔ぶれである。最近のお気に入りは永野だ。
山田監督の前作「キネマの神様」(2021年)では、永野をヒロインに起用した。最新作「こんにちは、母さん」(2023年)にも、主演の吉永小百合(78)、大泉洋(50)に次ぐ3番手で出演している。吉永の孫で大泉の娘に扮した。
「キネマの神様」では、主人公・円山郷直の青年時代(菅田将暉・30)の恋人・淑子を演じた。郷直は映画の助監督で、淑子は撮影所の近くにある定食屋の娘だった。
淑子は定食屋の常連である監督(リリーフランキー・60)を「先生」と敬い、その言葉には何でも素直に従った。だが、淑子が監督に逆らう日が来る。郷直は将来性がないから、別れろと助言された時だ。
淑子は突然、「大きなお世話です!」と大声で絶叫する。その後も監督をなじり続けた。淑子の豹変に監督は圧倒される。
永野は日常のシーンから突如として感情を爆発させる演技が得意。静穏から激情への移行だ。お笑いの世界の極意である「緊張と緩和」に近く、それによって観る側に強いインパクトを与える。「マイ・ブロークン・マリコ」でマリコの父親を罵倒したシーンもそうだった。
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