京葉線のダイヤ改正で大騒動 通勤快速の廃止でJR東日本千葉支社と沿線自治体が対立
通勤圏を拡大させただけに…
1987年の国鉄分割民営化で誕生したJR各社は、なによりも収益の改善を目指さなければならなかった。特に、JR東日本・東海・西日本の3社への期待は大きかった。
JR各社が収益の改善策として通勤圏の拡大に力を入れていく。通勤圏を拡大させれば、鉄道需要は必然的に増大する。こうしてJR各社は通勤圏を拡大するべく、運賃のみで乗車できる快速列車を増やしていく。特に、長距離の通勤利用を増やすことは安定的かつ効率的な収入になる。
京葉線が東京駅まで開業した1990年は、世間はまだバブルの余韻にひたっていた。東京の不動産価格も高止まりし、郊外需要は堅調と思われていた。
そんなタイミングで開業した京葉線は、通勤圏の拡大に成功したといえるだろう。京葉線を走る通勤快速により、内房線・外房線から東京駅までの所要時間は大幅に短縮。それが通勤至便という触れ込みとなり、内房線・外房線の沿線は人気を博していく。
さらに1995年、JR東日本は葛西臨海公園駅と海浜幕張駅に追越設備を新設。これによってデータイムの快速は所要時間を2分、通勤快速は7分も短縮し、さらに朝の時間帯に内房線・外房線から京葉線へと直通する通勤快速を一本増発する。
追越設備の新設は、翌1996年にも夜間帯に快速を2本増発するという効果を発揮した。さらに2004年には外房線から京葉線へと直通する快速を朝に一本増発し、2006年にも快速を増発している。
こうした経緯を見ると、通勤快速を全廃、快速の運行を昼間の時間帯だけにするダイヤ改正は千葉県や千葉市、沿線自治体にとって簡単には容認できないことも頷ける。
“廃止”ではない…? JR、自治体のすれ違い
「(今春の)ダイヤ改正において、『京葉線の通勤快速を廃止』と報道されていますが、弊社としては列車種別を変更したという認識です」と説明するのは、JR東日本千葉支社の広報担当者だ。
JR東日本千葉支社の立場から見れば、それまで通勤快速として運行されていた列車を各駅停車に変更しただけに過ぎない。だから「廃止ではなく、列車種別の変更だ」との主張だ。
しかし、沿線自治体の千葉県や千葉市はそう受け取っていない。朝の通勤快速は蘇我駅を出ると東京都江東区の新木場駅までノンストップで走る。その後は中央区の八丁堀駅、終着の東京駅に停車する。
通勤快速は東京へ通勤する人に特化した停車駅の設定となっており、この通勤快速があるからこそ、千葉市や千葉市以東の市原市や大網白里市などに住居を定め、そこから通勤する人もいる。
「通勤快速が廃止されると、これまでの生活が脅かされる市民が出てきます。そうした市民の生活を守るためにも、千葉市としては通勤快速の廃止は簡単に認められません。ところが、今回の京葉線のダイヤ変更に関しては事前にJR東日本千葉支社から説明や相談はありませんでした。いきなり発表された形です。京葉線の利用実態について、JR東日本千葉支社がどんなデータを持っていて、どんな考えで通勤快速を廃止しようとしているのかまったくわからない状況でした。それなので、ますはちゃんと説明してほしいとお願いしたのです」
と困惑するのは千葉市都市局都市部交通政策課の担当者だ。
千葉市からの要請を受け、JR東日本千葉支社長は12月28日に千葉市役所を訪問して神谷市長と面談。JR側はダイヤ改正への理解を求めた。一方、千葉市側は通勤快速の廃止撤回を訴えた。
両者の主張は平行線をたどり、通勤快速の廃止が撤回されることはなかった。面談後、神谷市長は「納得のいく説明がなかった」とコメントしている。また、年が明けた2024年1月4日には熊谷知事がJR東日本千葉支社長と面談。通勤快速を廃止するダイヤ改正の見直しを求めている。
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