年明け早々マキロイが驚きの発言 リブゴルフへ移籍した選手を「とてもラッキー」と評する思惑

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寄付のアドバイスも

 マキロイがルマイヤン会長と早い時期に会い、その際、ルマイヤン会長に対して決して悪くはない印象を抱いていたことは、これまで一度も明かされてはいなかった。むしろ、リブゴルフを激しく批判していたマキロイは、ルマイヤン会長やPIF、リブゴルフに対して敵意さえ抱いているように見えていた。

 しかし、ポッドキャストでは「この2年ほどの間、ゴルフ界のリブゴルフに対する見方やアプローチの仕方は間違っていた」と語り、周囲を驚かせた。

「PGAツアーにおいて僕たち選手は個人事業主で、個人個人が独立して契約を結んでいる。だから、どの大会に出場し欠場するかの判断も、選手各々の考え次第となる。トッププレーヤーが出場する保証もないのに、PGAツアーはスポンサー企業に巨額の提供を求めている。こんな方法でPGAツアーはよくやれているなと思う。その点、リブゴルフは、全選手が全試合に必ず出揃うわけだから、このシステムは実に素晴らしい」(マキロイ)

 リブゴルフを賞賛したマキロイは、こんな言葉を付け加えた。

「リブゴルフが(賞金に)100ミリオンを支払う用意があるのだとしたら、そのうちの50ミリオンをR&A(ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース)やUSGA(全米ゴルフ協会)が行なっている草の根レベルのゴルフ啓蒙活動などのために寄付したらいいのではないか。リブゴルフは『ゴルフというゲームの成長のため』を謳っているが、それならばそういう社会貢献をすべきだ」

 この言葉は「そうすればリブゴルフは、社会から広く受け入れられる」という意味を込めた、マキロイからリブゴルフへの心のこもったアドバイスのようにも聞こえてくる。

ラームの移籍を称賛

 昨年12月7日にPGAツアーからリブゴルフへ移籍したスペイン出身のジョン・ラーム について意見や感想を問われたマキロイは、ここでも少々意外な言葉を口にした。

「ジョンはとても賢い。ゴルフ界の先を見据えての決断は素晴らしい」

 ラームは21年 に全米オープン、23年にマスターズを制覇したメジャー・チャンピオンだ。

「だからジョンは、しばらくはメジャー4大会すべてに出られる。彼がいないとライダーカップで欧州チームが困り果てることは、彼自身が知っている。何のリスクを恐れることなくリブゴルフへ移籍できることを、彼はしっかり認識した上で移籍を決めたんだ。彼はとてもラッキーな立ち位置にある」

 ラームがリブゴルフへ移籍したことはPGAツアーにとっては「大損失」「大打撃」と囁かれている真っ只中で、マキロイはラームを「賢い」「素晴らしい」と高評価した。かつてマキロイは、リブゴルフへ移籍した選手たちを「裏切り者」というニュアンスで激しく批判していた。

 これは一体、何を意味しているのか。

 マキロイは22年の末という早い時期にルマイヤン会長と秘かに直接会っていたにもかかわらず、これまでただの一度もリブゴルフから移籍料のオファーが来てはいないという。

 ラームのことを「とてもラッキーな立ち位置」と評したのは、マキロイがラームに羨望の眼差しを向けているからではないか? 昨年の途中でPGAツアーの理事を辞任したのは、PGAツアー一辺倒の姿勢を改めることでリブゴルフから美味しいオファーを得たいと思っているからではないか?

 新年早々、米ゴルフ界にはそんな噂や憶測が広がっている。果たして2024年のゴルフ界はどうなっていくのか。年は明けたものの、あまりにも多くのことが暗雲に包まれている。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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