ホスト一斉摘発の裏ですすむ“本丸”「トクリュウ」包囲網 元メンバーが語った「アメーバみたいな存在だから警察は“上”に辿り着けない」

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 警察当局による“ホスト掃討作戦”は年をまたいでも変わらず「水面下で進行」しているという。警察庁長官が“真のターゲット”に挙げたのはホストの背後に潜む「トクリュウ」と呼ばれる犯罪者グループだが、捜査関係者ですら「正体は不明」と話す。そのトクリュウの実態に迫った。【鈴木ユーリ/ライター】

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「トクリュウ」とは闇バイトで実行役の“末端”を募集し、特殊詐欺や強盗などを繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ」の略称だ。昨年、世間を騒がせたフィリピンの「ルフィ」グループなどがその代表例とされ、警視庁は「治安上の脅威」と捉え、取り締まりを強化している。

 さらに昨年11月、歌舞伎町を警察トップとして18年ぶりに視察した露木康浩・警察庁長官は、報道陣を前にこう語った。

「我々が『匿名・流動型犯罪グループ』と呼んでいますけれども、そういう新たな犯罪グループが跳梁跋扈しつつある。この悪質ホストクラブ(問題)の背景にもそういった犯罪組織の関与があるのではないかというふうに考えております」

 つまり、警視庁が現在「トクリュウ」捜査の“突破口”と見て捜査のメスを入れているのが、歌舞伎町ホスト業界なのである。

 しかし「トクリュウ」とは本来、匿名性の高いSNSなどで実行役を集めるため、指示役が誰か特定しづらい「流動型」のグループのこと。若い女性に対する高額な“売掛金”問題が社会問題になっているとはいえ、ホスト業界はこれに該当しないようにも思われる。どういうことなのか。

悪質スカウトグループ

「真面目にやっている店もあるのに、業界全体を『トクリュウ』として見られるのは迷惑だ」

 こう語るのはホスト店のオーナーだ。

「この流れは“頂き女子りりちゃん”の逮捕から始まったと思う。彼女が詐欺で詐取した金を貢いでいた担当ホストを『組織犯罪処罰法違反』なんていう、普通はヤクザに適用する罪状で逮捕したのがそもそもヘンな話。客の金の出どころを一々チェックしなきゃ逮捕されるとなれば、商売上がったりですよ」

 だが、こうした警察の動きに対し、違う見方をするホスト関係者もいる。

「警察が狙っている『トクリュウ』は、実はホストじゃないと思いますよ。その裏にいる悪質スカウトグループ。その証拠に昨年末から『ナチュラル』の幹部が次々に摘発されているじゃないですか」

 ここでいう「スカウト」とは、繁華街で女性に声をかけ、風俗店やキャバクラなど夜の世界へと勧誘するビジネスのことだ。法的には違法かグレーゾーンに当たるが、歓楽街になくてはならない商売ではある。特に「ナチュラル」は歌舞伎町を中心に1500人のメンバーを擁する国内最大グループとされ、その実態について不明な点も多い。

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