吉高由里子主演「光る君へ」は「どうする家康」の雪辱を果たせるか 唯一のウィークポイントとは
準主演は「光源氏」のモデルの1人
バランスを抜きにしても、紫式部は興味をそそられる人物。「源氏物語」は1920年代以降、イギリスを始め世界各国で翻訳されており、その評価は極めて高い。1965年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、日本人として初めて紫式部を世界の偉人に選んだ。
ちなみに一部に誤解が残るようだが、「光る君へ」に光源氏は登場しない。光源氏は「源氏物語」の主人公で架空の人物。同書には光源氏の恋愛遍歴や華やかな暮らし、挫折、子孫の生き様などが書かれている。
かといって、光源氏がこの物語と全く無縁というわけでもない「源氏物語」の原文に記載されている光源氏の名前は「光る君」。物語には光源氏のモデルの1人と見られる後の摂政(幼い天皇の補佐)・藤原道長(柄本佑・37)が準主演で登場する。
紫式部は少女の頃、身分の違う道長と知り合う。紫式部の父・為時は官職のない貧しい下級貴族だったが、道長は後に関白(成人天皇の補佐)になる名門貴族・藤原兼家(段田安則・66)の3男。それでも2人はお互いに相手に対して特別な感情を抱き、生涯のソウルメイト(魂で深くつながる友)となる。
水面下で繰り広げられる権力闘争
成長した紫式部は遠縁で親子ほど年齢の違う藤原宣孝(佐々木蔵之介・55)と結婚。娘・賢子を産むが、宣孝が病死してしまう。このため、一条天皇(塩野瑛久・28)の后・彰子(見上愛・23)に女官兼家庭教師役として仕えた。この時期から「源氏物語」を書く。
彰子は道長の娘。紫式部の任官に当たっては道長の後押しがあった。また、道長は紫式部に紙や筆を提供した。どちらも当時は貴重品だった。ソウルメイトらしい振る舞いだった。
この少し前、やはり一条天皇の后である定子(高畑充希・32)に仕えていたのが、随筆集「枕草子」を著した清少納言(ファーストサマーウイカ・33)。紫式部の宮中仕えとは重なっていない。だから2人が敵対していたという事実はなく、同じ時代に生きた女性文人同士だった。
合戦シーンはない。一方できらびやかな貴族社会、水面下で繰り広げられる熾烈な権力闘争、その中で最高権力者に登り詰める道長と紫式部の関係、「源氏物語」が生まれた背景などが描かれる。
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