本当に猫の声? 作家・背筋が語る、愛猫がたまに出すという“様子の違う鳴き声”

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「これ、猫の声じゃなくない?笑」

 普段の鳴き声からは想像できない、太くて低い声だ。最初に聞いたときは驚いて飛び起き、リビングに走った。彼はケロッとした顔でキャットタワーの最上段に横たわり、毛づくろいをしていた。焦った私の様子に彼のほうが驚いていたくらいだ。それからもたまにその鳴き声が聞こえるときがあった。そのたびに驚いてリビングに向かうが、いつも彼は私の心配などどこ吹く風で寝そべっている。あるとき、私はベッドに入ってからも寝付くことができず、スマホをいじっていた。例によってリビングから「あああああああ」という鳴き声が聞こえたので、ふと思い立ち、スマホの録音機能でそれを記録した。後日、それを健診の折にかかりつけの獣医に聞いてもらったが、変わった声で要求鳴きをする猫もいるため、心配ないという。それでも心のどこかで納得のいかなかった私は、同じく猫を飼っている友人にその音声データを送った。友人からは、一言、こんな返事が返ってきた。

「これ、猫の声じゃなくない?笑」

 それ以来、私はリビングから「あああああああ」と聞こえても、ベッドから降りないことにしている。

 こちらが無闇に知ろうとしなければ、それは、私のとてもかわいい相棒の、とてもかわいい鳴き声と思えるから。

背筋(せすじ)
2023年、小説投稿サイト「カクヨム」に掲載された『近畿地方のある場所について』でデビュー。

デイリー新潮編集部

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