お茶は「最先端の健康飲料」だった! がんの成長、転移を予防…日本茶に豊富な成分「テアニン」とは
転移を防ぐ効果も
がんの研究には膨大な期間が必要となるため、お茶でがんが予防できることが実証されるのには、まだ時間がかかるかもしれない。だが、動物実験ではすでにお茶によるがん予防の効果が報告され始めている。
先の中村氏が解説する。
「がん細胞が恐ろしいのは、自らが成長するために血管を新生し寄生虫のように体の中で成長を続けること。それから、自らの分身を他の場所にも転移させてしまうことです。ただ、お茶に含まれるカテキンは、がん細胞が血管を新生するのを防ぐと同時に、転移も防いでくれる。これは動物実験ではハッキリと分かっており、いずれ人間でも証明される可能性があると思います」
がんの成長や転移を防ぐ効果まであるとすれば、お茶は“健康飲料”どころか“夢のドリンク”である。
ところが、驚くなかれ。カテキンの実力はまだまだ底が知れない。お次はなんと糖尿病である。
「甘い食べ物などには、糖が複数結合した二糖類や三糖類が含まれます。これらの多糖類は分解され単糖類になることで初めて体に吸収され、多糖類のままでは吸収に時間がかかる。カテキンにはこの糖を分解する酵素の働きを阻害する効果があり、急激な血糖値の上昇も抑えることができるのです。また、血糖値を下げるインスリンの働きを増強する効果も認められていて、お茶以外にも“桑の葉茶”の予防効果が注目されています」(同)
もちろん、カテキンが活躍するのは生活習慣病だけではない。秋津医師によれば、日常生活における感染症予防にもカテキンが力を発揮するのだという。
カフェインの効果を穏やかにするテアニン
「約3年半続いたコロナ禍には、お茶メーカーが競い合うようにしてカテキンによる免疫力向上の研究結果を発表していました。体内で発生した活性酸素は免疫細胞をも傷つけてしまうのですが、カテキンの抗酸化作用によってこれを防ぐことができるというわけです。さらに、カテキンには菌やウイルスの増殖を防ぐ『静菌』効果があることも分かっています。強い殺菌効果を謳う市販のうがい薬は、良性の菌まで殺してしまうのですが、静菌ならその心配はありません。お茶に一つまみの塩を入れれば、浸透圧が体とぴったりになり喉を傷めることもない。そのまま飲み込んでも大丈夫ですから、うがいが苦手な子どもやお年寄りでも難なく感染症予防をすることができる。私自身もよく患者さんにはお茶うがいをお勧めしています」(同)
心血管系の疾患や呼吸器系疾患の死亡リスク低減からがん予防、さらには糖尿病予防に免疫力向上や感染症予防まで。実に多岐にわたる健康効果を有する「カテキン」だが、忘れてはいけないのが、お茶には他にも有効成分があるということ。
中村氏は、
「お茶の成分の一つであるカフェインは、交感神経に働きかけて覚醒や集中をもたらしてくれます。玉露などの高級茶にはコーヒーより多量のカフェインが入っていることも珍しくありません。ただ、玉露を飲んで目がカーッと見開いたりすることはあまりありませんよね。これは三大成分の一つであるテアニンにリラックス効果があり、副交感神経に働きかけてカフェインの効果を穏やかにしてくれるからなのです」
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