史上最低視聴率を記録したNHK紅白の敗因 民放テレビマンは「入り中に頼りすぎ。自分たちの都合を優先させすぎでしょう」

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元ちとせ辞退の理由

「NHKホール以外からの中継や収録は、実に4割にも達したそうです。せっかく観覧に当選した人たちも、生で見られなかったのは残念でしょうね。かつてNHKは、『紅白』での外部からの中継には厳しく、曲や歌手に無関係な場所からの中継は拒絶していたはずでしたが……」

 2002年の「紅白」が顕著だった。この年にデビューした元ちとせは「ワダツミの木」や「君ヲ想フ」が大ヒットし、朝ドラ「まんてん」の主題歌「この街」も歌っており、「紅白」出場は確実と言われていた。ところが、NHK側の“都合”で、辞退せざるを得なくなった――。当時、このように報じられている。

《元は、年末年始は2週間前後フランスに滞在することが、今年2月時点で決まっていた。海外進出に向けたデモテープのレコーディングのためで、すでに現地のプロデューサーやミュージシャンDEEP FORESTのメンバーとのスケジュールが固まっていた。(中略)NHK側は早い時期から元に接触。レコーディングの合間をぬって2~3日、帰国し紅白に出場するプランなどを提示した。一方、元側が「パリからの中継なら対応できます」と応じたが、NHK側は「フランスから中継する考えはない」として実現しなかった》(日刊スポーツ:02年11月27日)

中島みゆきは黒部ダムから中継

 その一方で、NHKは02年の「紅白」の目玉として、これまで出場を辞退し続けてきた中島みゆきを引っ張り出そうとしていた。彼女は「プロジェクトX~挑戦者たち~」の主題歌「地上の星」が大ヒット。その中継場所として白羽の矢が立ったのが、富山の黒部ダムだった。もちろん、中島は黒部ダムとは縁もゆかりもない。

《スタッフは「意味のある中継をやってみたい」と「プロジェクトX」にちなんだ場所を中島側に打診。富士山レーダーなど複数の候補から検討を重ね、黒部ダムに決まったという。同地は「プロジェクトX」の第14回「厳寒 黒四ダムに挑む~断崖絶壁の輸送作戦~」(2006年6月27日放送)の舞台。(中略)ダム建設同様、中継は厳しい自然との闘いになる。気温マイナス10度前後という厳寒の地。積雪は3メートルにもなり、ダムへの道路は11月末には閉鎖されてしまう。スタッフは11月から4回、現地に赴き、調査を開始。「道路の一時開通の許諾は取れるのか」「電波は届くのか」など数々の問題をクリアしていったという》(スポーツ報知:02年12月19日付け)

 番組宣伝のためだったのだ。前出の民放プロデューサーが呆れて言う。

「そこまで『地上の星』に入れ込む余裕があるのなら、元ちとせのパリからの中継など簡単だったと思いますけどね。自分たちの都合優先で、視聴者に楽しんでもらおうという心が感じられませんでした。視聴者ファーストでないことが、スタッフの根っこにある最大の問題だと思います」

 さらに演出の問題などは後編【「純烈の演出には呆れた。あの場でNHKの宣伝をするとは」酷すぎた紅白歌合戦、国民的番組として本来やるべきだったこと】で語ってもらう。

デイリー新潮編集部

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